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『トラック野郎』の鈴木則文監督はなぜ桃次郎をえげつなく撮ったか

『トラック野郎』といえば、『仁義なき戦い』が一段落した1975年~1979年の東映で、ドル箱だった全10作のシリーズ作品です。そのメガホンをとったのは先月15日に亡くなった鈴木則文監督。今週号の『アサヒ芸能』(6月12日号)では、その追悼記事として同作に出演したマドンナたちに作品や監督をエピソードを語ってもらっています。

『トラック野郎』の設定は、長距離を走る、いわゆるデコトラ(電飾したキンキラキンのトラック)に乗る菅原文太(一番星こと星桃次郎)と、愛川欽也(やもめのジョナサンこと松下金造)の巻き起こす騒動。

基本的な展開は、当時人気絶頂で年間2作公開されていた『男はつらいよ』と同じで、マドンナが出てきてフラれる展開です。

アサヒ芸能・鈴木則文.png

ただまあ、その経過の表現が、小津安二郎映画の流れをくむ松竹と、「娯楽」時代劇や「実録」ヤクザ映画の東映の社風の違いなのか、あまりにも隔たりが大きく、当時、寅さんは毎回見ていた私も、『トラック野郎』は最初の3作ぐらいしか見ていません。

簡単に言うと、『トラック野郎』の作り方がすごく雑に見えたんですね。

シモネタや、「実録」東映らしい荒っぽい喧嘩などが当たり前に出てくるのです。

寅さんはタコ社長と殴り合いの喧嘩をしても、寸止めのようなシーンばかりでしたが、『トラック野郎』はえげつなかった。

まあ、『トラック野郎』の方がリアルなのでしょうが、創作物はリアルであればいいというわけではありません。

えげつなさを追求すると、どうしてもエスカレートせざるをえず、飽きられてしまうか、作るほうが限界を感じてしまうか、結局『トラック野郎』は10作で終わってしまいました。

でも、今考えると、もし『トラック野郎』が、“トラックに乗った寅さん”だったら、シリーズ化されるほどの人気作品にはならなかったと思います。

一方で古典落語のような『男はつらいよ』があって、もう一方でえげつない『トラック野郎』があるからこそ、どちらも光ったのでしょう。

文芸的な価値よりも娯楽で行こう、という方針は、もちろん映画としては「あり」だと私は思います。

同誌では初代マドンナのあべ静江が、鈴木則文監督を、ヤクザ映画全盛の東映の威圧感ある「男臭い環境」の中で異質な存在だったと振り返っています。
「でも鈴木監督はそのカラーとは違っていましたね。監督の中に文学青年だった匂いを感じることができました。私は寺山修司さんが好きだったんですが、監督は寺山さんと同じような、もっさりしたしゃべり方。言葉少なめで、どちらかというと、動より静の印象が強かった。ただ、ケンカのシーンなどは一気にいく。そういうパワフルな面も持ち合わせていましたね」
 事実、鈴木監督は映画界屈指の読書家として知られたのだが、あべ自身が文学少女だったことも、監督の「内包された部分」を見る要因となったようだ。
鈴木則文監督は、本当はどちらかというと桃次郎よりも寅さんを描くタイプだったのかもしれません。

少なくとも、文芸的な価値の高い作品を撮れない人ではなかったのでしょう。

でも同時期には寅さんがあった。

そこで、あえて、「静」ではなく「動」で勝負。東映の看板だった実録ものとも一線を画した喜劇のシリーズを作ったところに、クリエーターとしての真骨頂があると思います。

デコトラブームが起こった


同誌では、2013年11月7日号でも、カラーページに『トラック野郎』の特集記事を掲載。歴代マドンナの紹介と名場面を振り返っています。

アサヒ芸能・トラック野郎.png

初代マドンナは中島ゆたか、2代目があべ静江、3代目が島田陽子、4代目が由美かおる、5代目が片平なぎさ、6代目が夏目雅子、7代目が原田美枝子、8代目が大谷直子です。

個人的には『爆走一番星』(75年)の夏純子と、『度胸一番星』(77年)に出演した八代亜紀がよかったですね。

当時、東映はドラマでも『ベルサイユのトラック姐ちゃん』(1976年)という女性ドライバーの話も作っていましたし、本職のドライバーもデコトラが流行しました。

昨今の諸「ブーム」のように、広告代理店が入って、デコトラをはやらせるという明確な戦略のもとに映画が作られたわけではないようなので、ブームはもっぱら映画の功績でしょう。

『男はつらいよ』のように“国民的映画”とまではいわれなくても、『トラック野郎』も社会に影響を与えた名シリーズといっていいと思います。

私も、まだ見ていない作品も見てみようかな、という気持ちになりました。

アサヒ芸能 2014年 6/12号 [雑誌]

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  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/06/03
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アサヒ芸能 2013年 11/7号 [雑誌]

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
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