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梶原一騎没後31年の日に『弔花を編む 歿後三十年』を読む

梶原一騎

梶原一騎氏(1936年9月4日~1987年1月21日)が亡くなって今日で31年です。毎年書いているので一介の読者としてはもう書くこともなくなりましたが(苦笑)、実弟の高森日佐志氏が『弔花を編む 歿後三十年、梶原一騎の周辺』(文芸社)を上梓しているのでご紹介します。



著者の高森日佐志氏は、梶原一騎(高森朝樹)とは7歳、真樹日佐夫(高森真土)とは3歳違いの実弟です。

兄二人と梶原一騎夫人の篤子さんも亡くなったことで、最後の生き証人として高森家のエピソードを書いています。

梶原一騎(以下敬称略)は、1960年代~80年代前半まで、漫画の原作を書きまくっており、今の40代~60代の人はみな、何かしら梶原一騎作品を見て育っていると思います。

いまさら具体的な作品を上げるまでもありませんが、一応自分の世代に合わせてご紹介しておくと、巨人の星、タイガーマスク、ジャイアント台風、あしたのジョー、柔道一直線、キックの鬼、空手バカ一代、赤き血のイレブン、夕やけ番長、愛と誠、プロレススーパースター列伝……。

ストーリーや登場人物は虚実ないまぜで、名誉毀損に厳しい現在ではもう書けない展開もありますが、日本のアニメ・漫画界にしっかりと名を刻んだ人物です。

そんな梶原一騎が、“転落”したのは1983年5月25日。

銀座6丁目のクラブ「数寄屋橋」で、編集者たちと酒を飲んだ際、話がこじれて『月刊少年マガジン』の副編集長、飯島利和に空手で大ケガ(全治4週間)を負わせてからです。

被害届が出たことで、マスコミはそれまでの扱いが嘘であったように、この劇画原作の大家を叩き始めました。

水に落ちた犬は、手のひらを返していたぶりネタにするのはマスコミの常套手段です。

以前から煩っていた、壊死性劇症膵臓炎で体がボロボロになっていた梶原一騎は、以来87年1月に亡くなるまで、写真雑誌などで「激やせ」ぶりがおもしろおかしく、そしてみじめに報じられました。

その後、メディアでは10年近く、梶原一騎をまるで黒歴史のように扱いタブー視していましたが、高取英の『梶原一騎を読む』(ファラオ出版)や、朝日新聞の連載コラム『新戦後がやってきた』、斎藤貴男の『夕やけを見ていた男ー評伝・梶原一騎ー』(新潮社刊)など、1990年を過ぎると梶原一騎を再評価する読み物が上梓されるようになり、梶原一騎は“復権”することができました。

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親の愛情を受けることが少なかったインテリ家庭


『弔花を編む 歿後三十年』によると、3兄弟が大田区蒲田で飲み屋を営んでいた頃は、梶原一騎は札付きのワルだったことが書かれています。

ただし、梶原一騎がそうなったのは、母親の「大柄で激烈な気性」の遺伝と、その母親の愛情が同書の著者ばかりに注がれて、梶原一騎に対して十分ではなかったことが原因と考えられることは、高森篤子や真樹日佐夫らが示唆しています。

梶原一騎は、早稲田大学中退と自称していましたが、実際にはその頃施設にいました。

今の青山学院初等部に入学したのに、トラブルを起こして1年で退学して公立へ。

その後、教護院を経て大田区立相生小学校(タレント林寛子の母校)に転校するも、そこでも事件を起こして中学時代も教護院。

さらに、芝商業高校も中退しています。

梶原一騎の素行不良をかばうわけではありませんが、私立から公立に1年で転校というのは傷つくものです。

しかも、親の愛情、なかんずく母親の愛情が十分ではなかった。

これはサイアクです!

萬屋錦之介と淡路恵子の息子が、やはり同じような経過で転落して最後は自殺しました。

私がいつも言っているのは、子は「ほしのもと」で人生が変わるということです。

そして、「ほしのもと」の責任の多くは、両親にあるのです。

何も、子に手をかけるほどではなくても、悪い親というのはいるのです。

弟の真樹日佐夫は、都立小山台高校を放校になってから大検に受かり、やはり早稲田大学に進んだことになっていますが、著書では大学に行ったとは書かれていません。

高森兄弟は、早稲田大学がよほど好きなんですね。

梶原一騎が私立小学校に入ったり、日佐夫が都立の名門、小山台高校に入ったり、学歴にこだわったりしたのは、おそらくインテリの父親の意向が反映しているのでしょう。

全体として見ると、雑誌編集者だった父・高森龍夫の記述も長く、文章は古風で読みにくく、高森朝樹研究としては面白いかもしれませんが、梶原一騎としての作品論や、たとえば『タイガーマスク』のエピソードなどを期待するなら、必ずしもそれに応えているとはいえない内容です。

ただ、私自身は、興味深い本でしたけど。

ひとつは、梶原一騎の、暴力、孤独、妻・篤子に対するツンデレなどは、「ほしのもと」の影響を受けていたことがわかったからです。

梶原一騎が描いた、悲惨な結末をたどる「孤独なヒーロー像」は、母親の愛情を十分に受けられなかった“心の傷”が描かせていたのか、と改めて思いました。

タイガーマスク
タイガーマスクより。「むくわれることのない愛」という表現が切ない

そして、私は梶原一騎とは大田区蒲田という“同郷”であったことを改めて実感できたこと。

私も大田区蒲田で幼少時過ごしたのと、火災で家を失い、再スタートがやはり蒲田からだったので、蒲田の記述が出てくる同書は大変興味深く、今日は『タイガーマスク』を久しぶりに読みたくなりました。

梶原一騎作品、お好きですか。

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コメント 16

赤面症

正味な話、親にも子にも人格はありますから、相性もあります。
by 赤面症 (2018-01-21 23:04) 

末尾ルコ(アルベール)

梶原一騎没後31年の日に『弔花を編む 歿後三十年』を読む・・・梶原一騎作品はどれだけ読んでいるか分からないくらい読んでおりますよね。最近読み返したいなと思っているのは『愛と誠』で、特にツボはツルゲーネフの『初恋』をくり抜いてナイフを隠し持っていた美形の女裏番です。『初恋』ってとても短い小説で、新潮文庫だとペラペラの薄い冊子なのですが、どこにくり抜いてナイフを隠せるのかという(笑)。まあひょっとしたらハードカバーのツルゲーネフ全集だったかもしれませんが。この裏番が確か仲間の裏切りで縛られてあわや全裸にされそうなシーンは少年たちの心を大いに撹乱しました(笑)。
梶原一騎本人については、猪木VSウイリー戦のごたごた辺りでかなり微妙な感情を持っていました。やはり猪木ファンでしたので、猪木と対立する立場の人間は、当時は好きにはなりませんでした。もちろん現在はその出鱈目を含めておもしろい作品を作る創作力に敬服しております。
まあ、『タイガーマスク』は今でもちょいちょい読んでますので(笑)。このシーンはいいですね。この「くくくっ」といううめき声がこたえられません。そして「いつかはむすばれて」の「むすばれて」という部分。ルリ子先生、清純でありながら、いつか伊達直人と「そういう関係」を夢見ていたと思うと、読者のわたしもいささか(笑)疼きます。

大河ドラマは、日本のテレビドラマのクオリティとしては上位へ入ると思うのですが、「大河ドラマ的」と目される内容が必ず入るのが「好き」とは言えない大きな理由なのです。いろいろあるのですが、「主人公のほのぼのシーンが必ず入る」とか「結局はキレイごとになる」とか・・・NHKドラマなので仕方がないのでしょうが、あれだけ多くの(笑)俳優を出してもったいないなあと。それと近年は、「俳優が全国的知名度を得る」経路がほとんど大河と朝ドラのみになっている状況で、これもどうにかならないかなあと思っています。『紅白』と同じく、NHKの俳優に対する「出してやるぞ」的態度も気持ちよくありません。もちろん大河や朝ドラを習慣のように観ている方は多いでしょうし、「一つのジャンル」としては全然問題ないと思いますが、「俳優の仕事の頂点」のように喧伝されると、「それは違います」と、クオリティを含めるとそう言いたくなるのです。

実は竹中直人はけっこう好きなんです(笑)。主役の時は観てないのですが、『軍師 官兵衛』で脇として豊臣秀吉をやって、徳川家康の寺尾聡とクサい芝居をしまくるのをけっこうおもしろく観てました。子どもの大芝居はいただけませんが、大人の役者の場合だと、作品によっては愉しめます。竹中は映画通であるところも好感が持てます。そう言えば、妻が木之内みどりなんですよね。二人の結婚の際に林真理子が、「世間は美女と野獣のように言うけれど、まともに見れば、さほどのこともないアイドル女優と非常に高い才能を持った男との結婚」という意味のコメントを出していたことが印象的でした。まあ木之内みどりも作品に恵まれておれば、もっと高いところに行けていたとも思いますが。

子役の大仰な演技については、そうしたものを好む視聴者が多くなっているのも大きいのでしょうね。大仰に表情を作り、絶叫をすれば、「演技が上手い」と感じてしまう人が多いのだと思います。もうちょっといろいろな作品を観てから評してほしいのですが、映画やドラマって、鑑賞経験がほとんどない人でもつい「いっぱしのことを言いたくなる」ジャンルなんですよね。これは淀川長治さんも言っていました。
芦田愛菜なんかも、有名になったドラマはまあよかったのですが、その後は(さあ、今から名演技しますよ)的雰囲気がありありで、そうなると観ちゃいられなくなります。それと「子役ブーム」の時は、背後にいる鼻息荒い親の顔が見えるような感じで、そういうのもダメでした。
「子役が大成しない」というジンクスはハリウッドなども同様にありましたが、最近は案外大人になっても活躍する人が少なくない気がします。
ちなみに、小川範子って割と好きでした(笑)。小柄で童顔なのに、ちょっと色気がありました。ただ、あのタイプは大人になったら難しくなるでしょうから、大学進学は悪い選択ではなかったと思います。

>私は露骨にそのような態度はとらないのに、向こうがなんとなく私を気にしてくれる

これはですね~、ある意味騎士道精神と通底してらっしゃるのではと思います(笑)。もちろん武士道と同様に、騎士道なんていうのも後世の詩人などが創作したファンタジーという側面が大きいのでしょうが、とりあえずわたしの中では、「すぐに露骨な男女関係を求める」なんていうことはしないのが騎士道であって、結果的には「想う時間」や「我慢の時間」が長い方がより深い快感に結びつくと・・・まあこれも一つの真実ではないかと心得ておる次第です(笑)。そう、「いつかは」と疼き続けていたルリ子先生のように。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-01-21 23:39) 

nikki

タイガーマスクとか巨人の星は知ってますが、
漫画家に見えない人だったのですね。
by nikki (2018-01-21 23:45) 

ゆりあ

梶原一騎さんの作品、並べられてみると結構その作品を見てることに驚きました。
巨人の星、タイガーマスク、あしたのジョーはアニメで、柔道一直線は桜木健一さん主演のドラマで、そして愛と誠は少年雑誌の連載を楽しみにしていました^^
by ゆりあ (2018-01-22 00:11) 

ミケシマ

有名な作品ばかりですね
梶原さんのお名前も聞いたことがあります
作品は読んだことないんですけど…

とても辛い人生だったのですね
親の愛情を感じられずに育った子どもというのは、精神的にとても不安定になるようですね
秋葉原事件の加害者も特に母親からひどい扱いを受けていましたね
とんでもない犯罪者だけど、あんな親に育てられたことは本当に可哀相だと思います…
by ミケシマ (2018-01-22 00:56) 

ヤマカゼ

タイガーマスク見てましたが、ストリーが梶原一騎の人生とかぶっていたんですね。
by ヤマカゼ (2018-01-22 06:42) 

kou

梶原一騎さんの作品は好きだったので読んでましたが、タイガーマスクについては初めて知りました。
昔は床屋さんに漫画の本がたくさん有り、ただ、漫画を読みに遊びに行った頃が懐かしいです。

by kou (2018-01-22 08:00) 

johncomeback

少年時代に心を熱くしてむさぼり読んだ作品ばかり、
偉大な原作者でしたね。晩年が不幸でお気の毒でした。
by johncomeback (2018-01-22 08:39) 

チャー

何だかんだ言っても 根の部分は 親の愛情だと思います もちろん親だけの話ではありませんが 生かすも殺すも親次第
ちょっとオーバーかもしれませんが

タイガーマスク 好きでした(^^)
伊達のお兄ちゃんが カッコ良かった!
by チャー (2018-01-22 08:43) 

Take-Zee

こんにちは!
初めて顔を拝見して・・
ただただ、びっくりしたことを思い出しました。

by Take-Zee (2018-01-22 09:53) 

馬爺

梶原一騎さん原作の漫画はよく読みました、
by 馬爺 (2018-01-22 10:35) 

チナリ

こんにちは。

梶原一騎さんの作品は名前は聞いたことがある作品ばかりなのですが、見たことのある作品はというと、私にはありませんでした。

ただ、私がプロレスに興味を持ってから購入した「プロレススーパースター列伝」だけは、読みたい巻だけを数巻だけ持っています。

見たことがないけど誰もが一度は聞いたことのある有名なタイトルばかりなのですね。

by チナリ (2018-01-22 11:37) 

なかちゃん

タイガーマスクも巨人の星も、プロレススーパースター列伝も大好きでした。
ただ、スーパースター列伝に関しては『どこまでホントやら?』とは思っていましたが(^^;

by なかちゃん (2018-01-22 11:54) 

えくりぷす

梶原一騎作品は、amazonのkindleアンリミで150冊以上が読み放題でしたので、去年は結構読みました。
「男の星座」「スーパースター列伝」「悪役ブルース」等等。
梶原一騎が、少年時代から青年時代、素行不良で施設に入っていたということですが、創作の修行はどうしたのか、大量のヒット作品をなぜ生み出せたのか大変興味が湧きます。
by えくりぷす (2018-01-22 15:06) 

扶侶夢

私の中では何と言っても「あしたのジョー」が筆頭ですが、ダークホース的な名作として「青春山脈」(画:かざま鋭二)が挙げられます。主人公が老人となるまでの大河ドラマで歳を経た今読んでも面白いです。
by 扶侶夢 (2018-01-22 22:04) 

makkun

子供の頃からマンガに興味が無かったので
「マンガ本」とは縁があのませんでした。
・・が、野球は自分もしていたので興味が有り
「巨人の星」は欠かさず観てました。
正直言うと「このマンガをこの人が書いてるの?」
と思うような強面顏だったのに驚きでしたが
こんな生活面が有ったとは知りませんでした。
by makkun (2018-01-23 13:37) 

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