So-net無料ブログ作成

ザ・ベストテンの作り方、歌を絵にした独自空間の世界

『ザ・ベストテンの作り方』(三原康博、テレビ美術研究会著、双葉社)という書籍が話題になり、今週号の『アサヒ芸能』(3月28日号)は、「放送開始35周年で振り返る『ザ・ベストテン』視聴率40%の伝説」という「短気集中連載」を開始しました。

『ザ・ベストテン』の作り方

『ザ・ベストテン』というのは、1978年~1989年までTBS系列で生放送されていた1時間の音楽番組です。

各楽曲について、レコードの売り上げ、有線放送リクエスト、ラジオ放送のリクエストチャート、はがきのリクエストなどを独自の基準によるポイントで点数化。そのベストテンを下から発表して実際に歌手に歌ってもらう構成です。

「独自の基準によるポイント」というのがちょっとひっかかりますが、まあそれをいったら、入学試験の作問だって学校側独自の裁量なわけですし、いずれにしても順位づけをすることで、他の番組で歌われていたりリクエストされたりしている“売れている”歌が「トレンド」である、という根拠にはなったのでしょう。80年代で40%という視聴率はすごい。

ただ当時、出演者や、それを支える事務所としては複雑な気持ちだったのではないかと思います。歌の評価を数値化、順位化されてしまうことで、有利になる場合もあれば不利になることだってあるからです。

これから上昇する歌なら宣伝になるでしょう。しかし、ちょうどピークの頃、もし同時期に売れている他の歌に順位を追い越されたりすると、「あ、もうこの歌は落ち目なのか」と思われてしまい、その歌のセールス期間が短くなってしまう可能性もあります。

フジテレビが作ったタレントであるおニャン子クラブの出演がむずかしいなど、キャスティングの困難さはあったようです。

そうした事情もありながら、多くの歌手が出演し、お化け番組にまでになったのはどうしてか。当時の美術担当だった三原康博氏は、番組作りの醍醐味として、歌手ごとに独特の舞台を作ったことでショーアップをはかったことを述べています。
「作詞・作曲・編曲があって、最後に『作画』として美術を演出しているのが僕という自負はあったよ。たとえば『プレイバック』では床に四角いブロックをいくつも置いて、渋滞しているテールランプに結びつけた。あの歌詞を書いた阿木さんにも『僕の絵はどうですか?』と開いてみたかったね」『アサヒ芸能』(3月28日号)より
「「東京音楽祭」とか「レコード大賞」というのは、その1年に流行った曲が一堂に集まって、レコード界の日本一を決める広場です。これに20年間携わったということは、その20年の中で生きている僕が、当然その間、毎日、新聞を見たり、テレビを見たりしながら、その時代の人間になっている。それを表現すれば、その時代の広場になるんだろうと。そしてそこで流行った歌が流れ、スペースができていくという、そんな共通の広場を作った。だからたとえ聖子ちゃんが歌っていても、それは聖子ちゃんのためのセットではないんです。
 片や『ベストテン』は、聖子ファンがその歌を聞きたいからハガキを出す。僕らはそのお客さんに向けて作っている感じがあるんです。だからデザインポリシーがあって、そのために変えるんではなくて、聖子フアン、桑田ファンと、それぞれのファンに向けて、ハガキを書いてくれた人に対して「これでどうですか」と提示しているような気持ちでした。」(『ザ・ベストテンの作り方』より)
当時は、歌手がそれぞれ持ち歌を披露することで構成される音楽番組が他局にもありました。が、テレビの特性を生かして、歌手ごとの空間を作ったのは「ザ・ベストテン」だけだと三原康博氏は言うのです。
「『夜のヒットスタジオ』は広場でしたよね。妹尾河童さんがレギュラーセットを作って、電飾を華やかにしたり、木をたくさん用意したりという程度の変化はあるんだけれど、ほとんどはレギュラーの広場で、歌の遊園地があって、そこでちょこっと持ち込みのものがあるというシチュエーションです。
 日本テレビには『ザ・トップテン』というのがありました。でもあれは『ベストテン』の後発でしたので影響を受けすぎています。渋谷公会堂での収録番組ですが、舞台袖があるという意味で物理的にはいいんだけれど、カメラワークという点からすると自在ではない。どうしても舞台の作りだと、一方向気味になるわけです。テレビというのは、カメラが後ろへも行って周囲を撮れるという自在性がある。八方から撮るのが、僕は前提だと思うんです。だから舞台が空間とか立体の作り方は平面的だとすれば、テレビのほうは立体的だろうという気はしますね。
それが、歌そのものに価値をつけるとともに、今度のこの歌手のこの歌はどういう設定で歌われるのだろうか、とファンならずとも期待が高まったのかもしれません。要するに内容の濃い番組だったということです。

『ザ・ベストテンの作り方』では、当時の主な歌手の歌と舞台セットを紹介。同書によると、単純計算で1人あたり80万円かけたそうです。紹介されている歌手は、山口百恵、八神純子、庄野真代、郷ひろみ・樹木希林、円弘志、ゴダイゴ、桑名正博、ツイスト、久保田早紀、八代亜紀、郷ひろみ、岩崎宏美、柏原芳恵、河合奈保子、中森明菜、杉山清貴&オメガトライブ、小泉今日子など。

そういえば、今の雛壇バラエティー。舞台にもお金をかけていませんね。

ところで、こうした「昔の番組」を振り返る書籍が話題になると、「昔は良かったという懐古趣味」という意見もあります。

たしかに、当時のことを残しておきたいという「懐古」もねらいかもしれませんが、この書籍の狙いはそれだけではなく、今の番組作りにも、そのままとはいかないまでも、使えることがあったら使ってほしいという思いも込められているのではないかと思います。

時代の発展の道筋というものは、ストレートに進むまっすぐな上り坂ではありません。行きつ戻りつを繰り返したり、らせん階段のように回り道をしたりしながら、歴史的に振り返ると発展を貫いているのです。

全体としては昔より今が進んでいたとしても、ときには、昔の良いところが抜け落ちたり、部分的に昔よりも後退したりしているものもあります。それを見直し、現代に再生するルネサンスは積極的な試みです。

私も「昔は良かった」主義者ではありませんが、テレビがつまらなくなったと言われている今ならなおさら、こうした当時の「懐古」に耳目をしょくしてもいいのではないかと思います。

『ザ・ベストテン』のような濃密な番組を、今の地上波で見たいなあと私は思うのですが無理でしょうかね。

『ザ・ベストテン』の作り方

『ザ・ベストテン』の作り方

  • 作者: 三原 康博
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2012/11/28
  • メディア: 単行本


スポンサーリンク↓


nice!(359)  コメント(26)  トラックバック(0)  [編集]
共通テーマ:学問

nice! 359

コメント 26

motosoft

今は、ネット上にPV動画がアップロードされて、それを視聴して、ダウンロードで音楽を購入する時代になり、ザ・ベストテンのような、生放送でアーティストが歌う場面を見る(しかも、順位によっては、見たいアーティストが出ないかもしれない)をTVにかじりついて見るといったリアルタイム性が必要とされなくなっていますからね。
もう、ザ・ベストテンのような、お化け番組は、メディアのデジタル化による再編もあって、もう、出てこないように思います。
by motosoft (2013-03-31 13:54) 

繭

製作者側としては深いんですね。。
ベスト10に入ってないと聴けないより、ミュージックステーションの方が好きです。
by 繭 (2013-03-31 15:10) 

PATA

早速のご訪問ありがとうございます。
昔は毎週見ていました。
今はネットの普及で「ザ・ベストテン」のような
番組を作るのはかなり難しいと思います。

by PATA (2013-03-31 16:25) 

isoshijimi

残念ながらベストテンは現役世代ではないのですが・・・。しかし、とても丁寧な番組作りをされていたのですね。
すごいですよね。
by isoshijimi (2013-03-31 17:00) 

K

ザ・ベストテン、パンクというジャンルをを知るまで見てました。テレビの前にラジカセ置いて、カセットテープに録音してました。懐かしいです。
by K (2013-03-31 17:32) 

pom405

学校での話題はすべてベストテンでした。
クラスのみんなで番組にお手紙書いたこともあります。
懐かしいです1989年までだったんですね。
90年代はもう終わってた。
時代の感覚が薄れてきています。
by pom405 (2013-03-31 17:50) 

raomelon

セットが豪華でしたね^^
毎週楽しみに見ていました。
by raomelon (2013-03-31 18:02) 

昆野誠吾

テレビが見られなくなってきたのは
視聴者の多様化も大きな要因ですよね。
情報が濃密に拡散し、選択が大幅に増え
それこそ自由な人間が増えた訳で。
主婦向け番組、お父さん向け、家族団らん向け
などといったターゲットを絞る番組作りをしても
視聴者は大きなカテゴリーではくくれなくなっている。
番組作りも高度な技術や理論が必要な時代なんでしょうか。

by 昆野誠吾 (2013-03-31 18:44) 

RuddyCat-Lalah

ベストテンを観ていた時、舞台演出のことまでは考えが及びませんでした。言われてみれば、他の音楽番組とは一線を画する物でしたね。これからは、こういった視点で
by RuddyCat-Lalah (2013-03-31 18:48) 

RuddyCat-Lalah

ベストテンを観ていた時、舞台演出のことまでは考えが及びませんでした。言われてみれば、他の音楽番組とは一線を画する物でしたね。これからは、こういった視点で番組を観てることも楽しいかもしれませんね。
by RuddyCat-Lalah (2013-03-31 18:49) 

ちぃ

こんばんわ(^0^)、niceとコメントありがとうございました。
by ちぃ (2013-03-31 18:50) 

ヨッシーパパ

アイドル歌手を見る機会は、当時ベストテン番組ぐらいしかありませんでしたので、とても楽しみでした。
ビデオデッキもまだ普及していませんでしたし。
by ヨッシーパパ (2013-03-31 19:16) 

ryuyokaonhachioj

そうです。お邪魔したお宅で話しながら・・・
後で庭を見て話すんです。
by ryuyokaonhachioj (2013-03-31 20:26) 

ChatBleu

最近、歌番組自体が低調ですね。
by ChatBleu (2013-03-31 20:27) 

uryyyyyy

いっぷく さん、こんばんは。

音楽のランキング自体
信憑性が怪しいですけど
まぁ、楽しめる要素ではありますね。
by uryyyyyy (2013-03-31 21:16) 

ja1nuh

ザ・ベストテンは見てました。 確かに他の番組と違ってましたね。 今の時代だとテレビでは難しいかもしれませんね。でももう一度復活を見たいですね。
by ja1nuh (2013-03-31 21:41) 

moto_mach

懐かしいですね
今同じような番組を作ろうとしても
アーティストのスケジュールとかの問題で難しいかもしれませんね
昔はドラマでも何年も続く番組があったものですが
今は1クールで終わってしまいますからね
視聴率抜きで(それは無理かもしれませんが)本当に作りたいものを作れば視聴者に届くかも
なんて

by moto_mach (2013-03-31 21:58) 

ゆうのすけ

あの頃は 木曜の21:00が待ち遠しかったですね。♪~
今は 流行りや アーティストが良く判らないと言うのも 見なくなっちゃった要因であるのですけれど
・・・当時は 口パクとかありえなかったですもんね。。。
PVを見ているような感覚でなく 全てが手作りでしたよね。☆
by ゆうのすけ (2013-03-31 22:44) 

たじまーる

いつも御訪問ありがとうございます <(_ _)>
PC・スマホ・携帯電話の普及や
TVのBS・CS普及による多チャンネル化の状況下で、
今の時代に「ザ・ベストテン」のような番組を制作する
ことはむずかしいと思いますね。
TVやラジオしかなかった時代の影響もあって
みんなが夢中で見てたのかなと思います。
当時のTBSは、ベストテンを含めて制作者の意気込みを
とても感じることのできるいい番組が多かったと感じます。

by たじまーる (2013-04-01 00:28) 

ナベちはる

「ザ・ベストテン」は…分からないですσ(^_^;)
それにしても、【独自の基準】というのは曖昧な書き方ですね…
by ナベちはる (2013-04-01 00:29) 

はなぶく宇宙人

ザ・ベストテンを毎週楽しみにしていました。
テレビが面白くなくなったというよりも、テレビより面白いものがたくさん増えたんでしょうね。
結果、ニーズも減り、金銭的にも番組作りが難しくなったんじゃないかと思います。
by はなぶく宇宙人 (2013-04-01 01:45) 

pandan

ベストテン〜現役でみてました〜
なつかしい
by pandan (2013-04-01 06:16) 

toshi

懐かしい音楽番組ですね。
コメント、ありがとうございました。
by toshi (2013-04-01 06:47) 

chima

懐かしいですね~
ベストテンの順位に一喜一憂していたこともありました
by chima (2013-04-01 09:44) 

やおかずみ

ザベストテンの番組はよく見ましたね。順位を知るのが
楽しかったです。
by やおかずみ (2013-04-01 11:49) 

うたぞー

この記事を拝読しまして、この本を図書館で借りて
読みました。懐かしいのと同時にあの時代に生きたことを
うれしく思いました。この番組にあれだけかけていた人と
それにこたえるかのように歌でパフォーマンスした人たちの
ことを思い出しながら。
真剣勝負できる舞台があることがどれだけ幸せかということを
改めて感じながら明日も仕事に励みたいと思いました。
by うたぞー (2013-04-15 01:03) 

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました
Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます