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『元・新日本プロレス』、片山明の「快挙」はどう伝えるべきだったか

元・新日本プロレス。タイトル通り、新日本プロレス出身の6人の(元)レスラーの「あの時と、今」をインタビューした書籍です。

といっても、登場するのは、アントニオ猪木でもタイガーマスクでもありません。栗栖正伸、越中詩郎、片山明、大矢剛功、小原道由、大谷晋二郎など、80~90年代のプロレスファンでなければ名前すら知らない面々です。

元・新日本プロレス

専門誌にも久しく名前が出なかった人も含まれるので、ファンにとっては興味深い1冊だと思います。

ただ、結論から述べると、著者の金沢克彦氏は自画自賛していますが、そしてファンのレビューもおおむね好意的ですが、私から見れば、作品としての評価自体は正直、点は辛くなります。

なぜなら、決して突っ込んだ話はしていないからです。

これはプロレスマスコミに限らないことかもしれませんが、一般の人たちにすべてを知らせようとせず、身構え隠す癖がとくにプロレスマスコミには顕著で、それをもって「プロレス村」なんていう言い方もされます。

プロレスはショービジネスではありますが、監督と台本のもとで仕事をする芝居とは違い、「戦い」を前提とする複雑で微妙なジャンルです。

その微妙さは大衆に正しく理解してもらえないんじゃないか、とレスラーはいつも用心深くなっています。

その用心に負けて、もしくは気兼ねして、突っ込んだ取材をきちんとできていない、もしくはしても書けないのがプロレスマスコミです。

今回も、そんな遠慮が垣間見えました。

1人だけ例を挙げておきます。

たとえば、片山明という、頭から相手に突っ込むトペ・スイシーダという技を失敗して、頸椎を損傷(第4頸椎脱臼骨折)した選手がいました。

その後、プロレスマスコミでは片山明について報じられることはなかったのですが、同書では20年ぶりに本人がインタビューに登場。

ファンとすれば、それだけでも同書を「でかしたぞ!」と思うでしょう。

しかし、残念ながら、同書には片山明のけがについて、現在車椅子生活であることと、頭突きのトレーニングをして首が太い、ということだけしか書かれていませんでした。

それでは、彼の20年間の苦悩をリアルに描いたことにはならないのです。

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シビアな話ですが、今、彼は何ができて何ができないのかを明らかにし、事故直後はどうだったのか、そして今日に至るまでどんなリハビリでどの機能をどう回復させたのか、そのときどんな思いが自分を支えたのかなどをきちんと聞き出し、掲載すべきでした。

金沢克彦氏は、片山明に気を使い、厳しい現実を隠した、もしくはあえて聞かなかったのでしょう。

脳腫瘍がもとで神経を損傷した盛田幸妃(元プロ野球投手)のように、足を引きずってもマウンドに復帰できた選手はその経過を取り上げやすくても、いまだに車椅子の片山明にそれはむごいと、ファンも思うかもしれません。

しかし、頸椎をヤッちゃって一時は命も危ぶまれた人が、車椅子ながら記者のインタビューを受けて、首を太くするトレーニングをして、プロレス中継を毎週見るところまで回復したというのは、実は同じ怪我の患者の中には大変な快挙と思えることなのです。

現に私は、当時の片山明の頭の打ち方と首の折れ方から見て、てっきり片山明は脳挫傷も起こしてもう植物症か、意識はあっても寝たきりなんじゃないかと思っていました。

それが、インタビューにすらすら答えられるなんてすごいじゃないですか。

同じ状態でリングに立てなくとも、そこまで元気になったことを具体的に明らかにすることは、実は社会的な公益性が高く、それをもって元気づけられる患者やその家族だって全国にたくさんいると思うのです。

何より、どん底から、そこまで回復した「闘い」こそ、プロレスラーの「強さ」を示せる片山明の真骨頂!という書き方だってできるのではないでしょうか。

つまり同書は、全国民的な公益性よりも、プロレスラー自身やファンの思いを優先してしまったのです。やはり「プロレス村」の書籍になってしまったのです。

それと、リングに上がれない彼がどうして今療養できているのか。これも気になるところです。

それは、彼がけがをしたときの団体、つまりメガネスーパーが相当の補償をしているからです。同書ではそれも具体的に明らかにすべきでした。

金権プロレスとターザン山本に罵倒され、また事実その側面はあった「お金で人の口を封じる」団体でしたが、一方では、重篤なけが人の生活も責任を持っていたわけで、それは是々非々できちんと書くべきです。

お金といえば、彼は新日本プロレスの契約内容も明らかにしています。

2ちゃんねるのプロレス板では、新日本プロレスは安定した月給制だが、全日本プロレスは馬場がケチだから1試合いくらのギャラ制だ、などと知ったかぶって書かれていますが、片山明の話によると、新日本プロレスは80年代後半から、月給制→1試合いくらで何試合保証という契約内容にかわったそうです。

同じ格の場合、実は全日本プロレスの選手の方が新日本プロレスよりギャラが良かったというのは、すでに全日本プロレスとSWSの裁判で明らかになっています。

ネットの情報のいい加減さを改めて知ることができるでしょう。

元・新日本プロレス (宝島SUGOI文庫)

元・新日本プロレス (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 金沢 克彦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/06/07
  • メディア: 文庫


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小島 光子 (旧佐藤)

私は片山さんが奥様と御結婚する、寸前に神奈川県川崎市高津にある某大学病院で入院仲間?として、体格の良い私に片山さんが、「お姉ちゃん、体格イイな!道場こないか? 腹、空かないか、カレー食うか?」なんて話かけられて、何度かお断りしているうちに、お友達と言うか、知り合いにならせていただき後楽園ホールや、東京ドームなどのチケットを購入させて頂いたり、奥様から東京の外れの病院を聞いて一度だけでしたが、御見舞いに寄らせてもらうくらいしか、出来なかったのですが、自宅にチケットを持ってきて頂いたり、新横浜の私の職場に寄って頂いたくらいですが、片山さんの事は心の隅に何時もありました。
やっと、マトモな携帯を持てるようになり、片山さんをブログで検索できて、近況を知る事ができました。
私も結婚をして、今は新潟県に住んでいます。そして、私は膠原病を患っていますが、片山さんのように自分の病気に向き合う心(魂)で、1日1日を大切に大事に生活しております。23年以上前に知り合った私の事など、片山さんはお忘れだと思いますが、私の願いが叶うならもう一度片山さんにお逢いしたいのですが、もちろん片山さんに了解を頂いてからで良いので、リハビリ施設の名前と場所。交通機関など。私は夜行バスで大阪まで出て、そこから岡山まで山陽本線で向かうつもりでいますので、どうぞ、返事をお待ちしています。
by 小島 光子 (旧佐藤) (2014-10-15 05:09) 

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