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『温泉失格』(徳間書店)源泉かけ流し原理主義を問う

『温泉失格 ~『旅行読売』元編集長が明かす 源泉かけ流しとこの国の温泉文化の真偽~ 』(徳間書店)という書籍を読みました。著者は、元『旅行読売』編集長・飯塚玲児氏です。

それにしても、タイトルがセンセーショナルです。では何をもって温泉失格なのでしょうか。

温泉失格

著者の飯塚玲児氏によると、「ゆがみが生じている源泉かけ流し温泉の認識を「再確認」「是正」していただき、安全で安心、清潔な“真の温泉”の尊さや魅力を知ってほしい」ために、「源泉かけ流し温泉に対して挑戦的なもの」にしたというのです。

同書の内容を簡潔に延べると、源泉かけ流し温泉なら清潔で、循環濾過式の温泉は不潔であるという決めつけは違いますよ、という指摘が行われています。

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温泉には、大きく分けると源泉かけ流し方式と循環ろ過式がありますが、前者は次々わいてくる温泉水を使い、後者は、いったん使った温泉水を繰り返し使う、というイメージです。

後者は、レジオネラ菌によるトラブルが報じられることもあって、不衛生なイメージを持たれています。

レジオネラ菌というのは、土壌や河川、湖沼など自然界に広く生息している酸や熱に強い菌のため、温泉でも生き残ります。

よどんだ水の中で増殖し、エアロゾル(飛沫)を吸い込んで肺に感染するため、一般には循環式浴槽による打たせ湯やジャグジーが感染しやすいともいわれます。

それだけ聞くと手ごわい病原菌のように感じますが、では循環ろ過式温泉に入った人がみな感染するかといえばそんなことはありません。

もともと自然界に存在するありふれた菌で、人から人への感染もありません。実際には、幼児や老人、体の弱った人など、免疫力が十分でない場合にのみ、感染する可能性があるものと考えられています。

その一方で、源泉かけ流し方式は循環式ではないから、「よどんだ水の中で増殖」する心配がない、つねにお湯が入れ替わる清潔な温泉であるからレジオネラ菌とは無縁であるかのような比較論や期待感が高まっていったように思います。

はたしてそうなのでしょうか。

そもそも「源泉かけ流し」とはどういうことなのか。

月刊『旅行読売』編集部によると、「源泉かけ流し温泉」の定義について、「1度湯舟で用いた源泉を再利用しないこと。加水、加温は湯量を問わず可」としています。

さらに松田秀雄副編集長は、あくまで個人的な意見、と前置いた上で、「加水、加温もしない。種類を問わず消毒剤は使用しない。循環併用はしない、というのが理想的」と定義しています。

ところが、2004年に国土交通省が行った全国の温泉施設の実態調査で回答があった1310軒の施設のうち、加水・加温、循環を行っていないと答えた施設は、わずか1割ちょっと。

環境省の調査でも、1万2122施設の回答で、加水しているところは全体の3割以上、加温しているところは全体の半分以上、そしてあろうことか、循環装置があるところも半分以上あったといいます。

これが「源泉かけ流し」を標榜する温泉の実態ということです。

循環したら、ちっとも「かけ流し」じゃないではないか、という気がします。

それでも「かけ流し」を標榜するのは、「かけ流し」と名乗った方が集客に有利だ、という戦略からでしょう。

それは、私たちが「かけ流しの方が清潔に決まっている」という思い込みがあるから、その「ニーズ」によって生じた「偽装」というわけです。かつての白骨温泉騒動もそうした背景があったものだといいます。

次に著者は、湯船の底に沈んでいる落ち葉を見て、「いったいかけ流し温泉は、湯船の底に沈んだゴミをどうやって処分しているのか」という疑問を記します。

厚生労働省は、1時間に1ターン(浴槽内の温泉がまるごと入れ替わること)以上を、循環式浴槽の換水率の指針として示していますが、「源泉かけ流し温泉」を標榜するところでそれをクリアしている所は1割にも満たない」ということを取材で知ります。

つまり、「源泉かけ流し」なら清潔ということはいえない、ということを自分の入泉体験で気付いたのです。

見かけやイメージではわからないよ、という話ですね。

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同書から離れた、温泉つながりの余談ですが、都道府県別の温泉地数で1番はどこかご存知ですか。

「おんせん県」の商標登録した大分県? 草津温泉を擁する群馬県?

どちらもノーです。

とくに湯布院を要する大分県はベスト10にすら入っていません。(群馬県は第8位)

第1位は北海道(244)、第2位は長野県(225)、第3位は新潟県(153)だそうです。(2013年3月、環境省発表)

いずれも、誰でも知っているような有名温泉街がありません。でもベスト3です。

温泉には、世間の評価やイメージだけでは、その価値や実態はわからないことがある、ということでしょう。

もっとも、世の中、温泉に限らず、誤解や先入観によるバイアスに満ちています。

立ち止まって、「それ、ほんとか?」と懐疑してみる慎重さはどんなことでももっていたいものです。

温泉失格 ~『旅行読売』元編集長が明かす 源泉かけ流しとこの国の温泉文化の真偽~ (徳間ポケット)

温泉失格 ~『旅行読売』元編集長が明かす 源泉かけ流しとこの国の温泉文化の真偽~ (徳間ポケット)

  • 作者: 飯塚 玲児
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/03/23
  • メディア: 新書


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