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キャンディ・キャンディはどうして封印作品になったのか

キャンディ・キャンディという少女漫画がありました。単行本の累計発行部数が約1200万部、キャラクター人形が単年で200万個(約80億円)を売り上げた大ヒット作品ですが、少し前の週刊誌(『アサヒ芸能』5月16日号)が特集した「闇に葬られた放送禁止映像」では、テレビアニメが封印作品のひとつに数えられています。

『アサヒ芸能』5月16日付.jpg
『アサヒ芸能』5月16日号「闇に葬られた放送禁止映像」

キャンディ・キャンディ.jpg
「作品の凍結は解けないまま」という説明が……

おてんばいたずら大好き、かけっこスキップ大好き……。

主題歌は今でも覚えているのですが、本編は2度とお目にかかれないのは残念です。

どうして封印されてしまったのか。

作品の権利を巡るトラブルが裁判沙汰になったからです。

2004年7月21日のことでした。

東京高裁(江見弘武裁判長)は、漫画「キャンディ・キャンディ」の商品を販売した「アップルワン」が販売中止を求められて損害を被ったとして、漫画家いがらしゆみこさんらを相手に約908万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、いがらしゆみこさんらに約175万円の支払いを命じました。

キャンディ・キャンディの作画担当者、いがらしゆみこさんは、自分こそ作品の著作権者であるという立場から、同社と商品化の契約を締結。ジグソーパズルなどを販売していました。

ところが、このとき、いがらしゆみこさんはキャンディ・キャンディ原作者の水木杏子さんと作品の権利を巡って係争中で、「水木杏子は著作権者ではない」と主張したいがらしゆみこさんが敗訴しました。

作品は、原作者があってできるもの。これは第三者的に見れば順当な判決です。

作品が、いがらしゆみこさんに排他的権利がないことが確定したことで、いがらしゆみこさんだけが著作権者である前提で進められていたジグソーパズルなどの販売もできなくなってしまいました。

江見弘武裁判長は、その責任について「著作権訴訟について告知する義務があったのに知らせず、いがらしゆみこさんは損害への責任を負う」と指摘したものです。

1審では、いがらしゆみこさんへの請求は「直接契約関係にない」と棄却されていました。

客観的に見て、作画しか担当していないいがらしゆみこさんが、なぜそんな無茶なことを主張したのか、と思うでしょう。

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いがらしゆみこさんの言い分は、水木杏子さんは原作者ではなく参考資料の作成者にすぎないから、著作権はないというものでした。

キャンディ・キャンディは、もともと講談社編集部が企画したものを水木杏子さんに依頼したもので、水木杏子さんが持ち込んだものではないといわれています。

しかし、水木杏子さんがプロットづくりを行い、おそらくはネーム(漫画原稿の計画案)にも何らかの形でかかわっているはずですし、そんなことをいったら、いがらしゆみこさんだって、当時講談社専属だったから作画担当者に選ばれただけで、いがらしゆみこさんのロジックなら作画の権利だって講談社が持っていなければおかしいという見方もできます。

そもそも、「原作」と「参考資料」では、どう違うというのか。

いがらしゆみこさんから、直接言い分を聞き出したことがないのでわかりませんが、いずれにしてもそのような了見なら、漫画を発表した時点で、どうしてそう明記しておかなかったのでしょう。

「原作、水木杏子」というのは、もはや作品を知っている誰でも自明なことではないのでしょうか。

いがらしゆみこさん自身のオフィシャルホームページで、何の留保もつけずに水木杏子さんを「原作者」として表記しているのを見ると、あの裁判はいったい何だったの、という疑問を改めて抱かざるを得ません。

梶原一騎原作、ちばてつや作画の「あしたのジョー」という名作があります。

この出だしの部分は、ちばてつや氏が梶原一騎氏の原作を無視して一人で考え描いたといいます。

あの独自のムードは、ちばてつや氏が作り出したわけです。

が、だからといってちばてつや氏は、同作品を自分だけの手柄と主張したことなど1度もありません。

ちばてつや氏だけではありません。

梶原一騎氏はいろいろむずかしい人で、「空手バカ一代」の漫画家が交代したように、漫画家との関係は必ずしも良好ではなかったようですが、それでも、漫画家が梶原一騎氏を出し抜いて、自分だけの作品といったことはありません。たとえ梶原一騎氏が晩年、おちぶれて亡くなってからも……。

それはそうでしょう。

作画の時点でどんな演出の追加や修正があったとしても、原作者なしにおおもとのキャラクターは誕生していなかったからです。

原作あっての作画、作画で生きる原作。

作品が両者の相補的、相互依存的な関係で成立しているのは、著作権という法律を知らない子どもだってわかります。

その点で、いがらしゆみこさんの主張は、その経緯や言い分にかかわらず、残念なものだと私は思います。

いがらしゆみこさんの狭信的なファンの中には、「ビジネス観が合わない原作者だと漫画家が可哀想」などという同情論もありますが、そんなもの今回の理由にはなりません。

原作付き漫画というのは、そもそもそういうリスクを伴うものです。

売れっ子の漫才やバンドなどでも、ギャラの配分や権利の行使で揉めて解散している例がいくらでもあります。

何も「キャンディ・キャンディ」だけがそうだというわけではありません。

その最大の被害者はだれか。

本やグッズを買って応援してきたファンでしょう。

繰り返しますが、この件は、原作者としての地位自体を否定したところに根本の問題があります。

そして、作品は編集者やファンを含むみんなで作られたものだ、という意識も欠落しているように思います。

これは、私たち一般人にも通じる教訓です。

どんな仕事も、いろいろな立場と技量の合作によっていくつもの工程を経てなしえるもので、そのプロジェクトの中には仕事に対する哲学の違う人だっています。だからといって、そこでいちいち権利の分捕り合戦のようなことをしていたらどうなりますか。

どんなに重要なセクションを任されていたとしても、自分だけでその仕事ができていると思ったら大間違いです。

アサヒ芸能 2013年05月16日号 [雑誌][2013.5.7]

アサヒ芸能 2013年05月16日号 [雑誌][2013.5.7]

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  • 発売日: 2013
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