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『がんのお姫様』に見る苦悩と結論

『がんのお姫様』(岩波書店)という書籍を読みました。初発のステージが卵巣がんⅢCで、再再発した海老原暁子さんのエッセイです。自分の生い立ちや闘病中の生活などを書き記しています。書くことは他者献身であり自己救済であるといいますが、まさに人生をきちんと書き残していきたいという著者の確固とした意識を感じます。

闘病記ってどうして読まれるのでしょう。

人の不幸は蜜の味だから? 人の不幸に涙を流す優しい自分を確認したいから? 自分や家族に同じ病気の人がいるから情報として?

闘病記は重いものです、完治した人が振り返るのならともかく、“現役の”再々発患者の話が重くないわけがありません。

しかし、そういう立場だからこそ、その人の飾ることのない本心や哲学を見ることができます。

だから私は闘病記を読むのです。

同書は、たんにお涙頂戴の悲しいものでもなく、さりとて自分自身をポジティブシンキングでだますイタイ“明るさ”もありません。

大学教員でもあり家庭もある一人の女性として、病気を通して家族や仕事場についてウィットに富んだ語り口で綴っています。

現実を受け止めて悩み、でも生来の自分の生き様そのものはブレないという、知的で自分に誠実な生き方を描いています。

全体を通じて、最近の困った流行である「患者よ、がんとたたかうな」という潮流に批判的なことも共鳴できます。

再々発の海老原暁子さんは、戦わなければ、この本を書くこともなくお星様になっていたからです。

命あっての物種、とはよくいったものだと思います。

大橋巨泉さんにしてもそうですが、もっと声を大にして「あきらめるな」という主張をしていただきたいと私はおもいます。

開き直りの中に切ない本音も?


WANという「女性と女性をつなぐポータルサイト」に寄稿されている海老原暁子さんの文章にも、そうした生き様はよく出ています。

「私の余命は長くないだろう。それなら私がやらなければならないことをしよう」そう思わされたと書いています。

色々悩み苦しみ悲しんだが、その結果、生きている限り「私がやらなければならないことをしよう」というシンプルな結論に至る。

なるほど、そういうものか、そういうものだよなと思いました。同書にも「開き直った」と表現されていますが、結局その結論にならざるをえないんですよね。、

ただ、同サイトを見ていたら、岩波書店から本を出せたから「がんになって得しちゃった!」とも書いてあります。

同病者の闘病記まで「冷静に」レビューする人が、ここはちょっと観念論的というか、ポジティブシンキングが入っているかな、という気がします。

マジレスしますが、がんになったから本を出せたのではなく、がんになったことを受けて自分の生き方を整理できたから本を書けるようになったのです。がん患者のすべてが本を出せるわけではないでしょう。

意地悪に指摘すると、「がんの得」という表現は、ちょっと「がん患者の強がり」が入っているかなという気がしました。

岩波だろうがどこだろうが、健康と引き替えにできるほどの喜びであるはずがないのですが……。

でも、せめてそう表現しないとやってられないのかもしれません。

たんに、「開きなおっ」ているだけでなく、そんな切なさも同書の行間からは感じることができるでしょう。

がんに感謝なんかできません!


私の話ですが、今日は先月受けた健康診断の結果を聞きに行きました。

いつもなら、「問題ありません」ですんでいたのに、今回は胸のレントゲン画像が表示されていました。

医師は肺の真ん中あたりを指して、「このへんが気になると放射線科から所見があったのでCTを撮ります」。

ええー。

いきなりCTってただごとではないでしょう。

あまりにも突然のことでしたが、さすがに、結果が出るまでの待ち時間には「もしも」のことを少し考えましたね。

……まあ結果は、何でもなかったんですけどね。

私は、幼い頃から、親や近い身内が重篤な病気になった時に何度も立ちあっています。

何より、自分の不在中に出火した自宅火災の経験もあり、もう不幸慣れといいますか、人生における“青天の霹靂”には耐性が多少なりともできているつもりでした。

そんな私も、今日の出来事は突然過ぎて少し疲れました。

きっと私のような弱い人間は、海老原暁子さんのような本は書けないでしょうね。

最近も書きましたが、人間、プラス思考といってもしょせん気休めは気休め。

命を脅かす病気になれば、かりに助かったとしても、自分も家族も人生が変わってしまうんです。

私はやはり、一部に言われる、がんになってよかっただの、がんよありがとうだのといったポジティブシンキングはありえないです。

がんにかぎらず、病気にはならない方がいいに決まっているのです。

どうせ感謝するなら、健康な自分に感謝したいものです。それが人として偽らざる気持ちじゃないんでしょうか。

改めて、健康には留意したいと思いました。

がんのお姫様

がんのお姫様

  • 作者: 海老原 暁子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/10/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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