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食品の新たな機能性表示の問題点を考える

食品の新たな機能性表示制度に関するニュースが連休中にも報じられました。食品の中には、許可を必要とする特定保健用食品(トクホ)と、一定の基準を満たせば表示できる栄養機能食品など、「健康維持・増進に関する表現」を許されている「保健機能食品」があります。それをさらに拡大しようというわけですが、はたして食品に医薬品的な価値を付けるとどうなるか、心配な点もあります。

医薬品と食品というのは、法律上はっきりと区別されています。

私たちが日常口にするものは、法律的に医薬品(医薬部外品を含む)でないものはすべて食品とされており、医薬品は薬事法に定義されています。(薬事法第1章総則第2条)

医薬品と食品は、法律だけでなく、目的も使い方も違います。

なんでもない健康な人が、体全体の健康維持のためといって、風邪薬や血圧降下剤や整腸剤などをいっぺんに服用するということはあり得ないし、逆に特定の病気になったからと、特定の食べ物だけを食べて病気を治すということもないでしょう。

それでも、部分的に心配な人が少しだけ食べ物によるコントロールができるように、食べ物の中で、特定保健用食品(トクホ)と、栄養機能食品という表示が一部に認められています。

食品について.gif
厚生労働省サイトより

しかし、今の表示制度ではだめだ、もっと表示できる枠を広げろ、という声があるわけです。

要するに、健康に役立つような表示をすることで、商品のイメージアップと売上に役立てたい業者がいるのでしょう。

この動きは、企業の裁量で健康機能性表示を行い、消費者はそれを自己責任で判断して摂取する時代を目指しているといわれます。

その背景には、健康増進法が2002年に施行され、健康は自己責任で、という心構えが立法化されたことがあります。

昨年6月5日、安倍晋三総理は、「健康食品の機能性表示を、解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには、的確な情報が提供されなければならない。当然のことです」という「成長戦略第3弾」のスピーチを行いました。食品の健康表示をもっと積極的にさせますよ、という話です。

これはすなわち、健康表示の規制緩和というわけです。

しかし、医薬品と食品は、目的が違うものなのに、食品に医薬品的なお墨付きを与えようとする議論というのは、私は懐疑的です。

健康によい成分が含まれているからといって「ばっかり」ではダメ


週刊誌にはしばしば、食べ物の健康効果を特集する記事が掲載されます。

これもそのひとつですが、今週号の『週刊大衆』(5月26日付)では、「長寿県に学ぶ100歳まで生きるマル秘健康食」という記事があります。

週刊大衆・食品.png

平均寿命の高い県の名産・名物を健康食品として紹介しています。

具体的には、沖縄の豚肉、かつお、野菜、海藻、など、長野のくるみ、静岡の緑茶です。

たしかに、健康によい成分が含まれているといわれている食材ばかりですから、無難な記事の作り方だと思います。

しかし、こういう健康情報というのは、得てして“真面目な”日本人を「ばっかり食べ」「絶対禁忌」という偏った行動をとらせてしまうことが少なくありません。

かつて、みのもんたの番組で取り上げられる食材は、その日のスーパーの棚をカラにしたといわれるのはわかりやすい例です。

しかし、食べ物というのは、どんなものでも食べ過ぎはもちろん、それ「ばかり」を食べることが決していいことではありません。

なぜなら、食べ物はたいていものは、ひとつの食材の中に、人間にとって有益なものと害のあるものとが共に存在しています。

そもそも、植物にしろ牛や豚にしろ、自然の食材というのは、人間に食べられるために誕生したわけではないからです。

それが悠久の歴史の中で、いろいろなものをバランスよく、食べやすいように味付けして食べるという人類の知恵として「料理」という概念が生まれたはずです。

緑茶の良い面と悪い面


まわりくどくなりましたが、たとえば緑茶を例にとりましょう。

緑茶.jpg

記事で紹介されている緑茶はたしかに、これまでの疫学調査で、様々な健康効果を考察されてきました。

その部分だけを聞くと、だったらそれをたくさん飲めば健康に良いと思ってしまいがちですが、そうではありません。

「健康食品」の安全性・有効性情報』の「素材情報データベース」には、「茶」について詳しく報告がまとめられています。

それを読んでいくと、たしかに、「血中のコレステロールおよびトリグリセリドを低下」「高血圧に対して有効を示唆」「虚血性心疾患リスクや心筋梗塞後の死亡リスクが低減するという報告」「緑茶の飲用がある種のがん (膀胱がん、食道がん、膵臓がん) リスクを低減させるという報告がある」といったよいことは書かれています。

しかし、その一方で、「緑茶は適量であれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、多量の経口摂取はカフェインの副作用が出やすくなるので、危険性が示唆されている」とし、緑茶多飲・茶葉喫食との関連が疑われるタンニンが原因らしい残胃胃石イレウスの報告も書かれています。

また、カフェインには利尿作用があるので「切迫性尿失禁を悪化させる可能性がある」「体内での胃酸産生量が増加するため、潰瘍を悪化させる可能性がある」など悪いことも書かれています。

禁忌対象者はとくにいませんが、医薬品との相互作用は多くに認められ、「以下のような疾患や健康状態の場合、緑茶の影響を受けることがあるので注意して用いること:出血傾向、うつ、糖尿病、不整脈などの心臓異常、高血圧、骨粗鬆症、不安症、緑内障」という気になる記述もあります。

これを読むと、たとえば、緑茶の「効果」を額面通り受け止めた高血圧の人が緑茶をがぶ飲みしたら、それによって今度は持病の緑内障が悪化してしまった、なんて可能性だってあるわけです。

冒頭の話に戻りますが、食品の「健康効果」だけを表示すると、それは冗談では終わらなくなるかもしれません。

緑茶にかぎらず、食材・食品というのはすべて、「いいこと」だけでなく「悪いこと」もあるのです。

ですから、ことさら「いいこと」だけを強調して健康を結びつけるような宣伝を競うような動きは、人々が長年の歴史の中で考えてきたバランスの良い食生活を壊してしまうことになりかねないのか、という心配を私はしています。

週刊大衆 2014年 5/26号 [雑誌]

週刊大衆 2014年 5/26号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2014/05/12
  • メディア: 雑誌


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