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『「しがみつかない」人ほどうまくいく』21世紀に提案する人生観

『「しがみつかない」人ほどうまくいく』(PHP研究所)という書籍が話題になっています。著者は精神科医の西多昌規氏。「理想の自分」「他人の評価」「完全主義」「人生のレール」「古い価値観」など、人からよく見られたいあまりに自分を縛る価値観に「しがみつかない」ことを提案。その方策も解説しています。



のっけから否定するわけではありませんが、『「しがみつかない」人ほどうまくいく』というのは、うつ病患者を診てきた著者のひとつの提案に過ぎません。

「理想の自分」「他人の評価」「完全主義」「人生のレール」「古い価値観」などにしがみつくな。

私個人は、著者の提案を基本的にはそのとおりだと思います。

ただ、人間の価値観は様々です。

中には、しがみつかなければ生きていけない人もいると思います。

だからといって、私は別にその人を軽蔑するつもりもないし、逆にその人が、しがみつかない人を見下すこともおかしいと思います。

そもそも、世の中、しがみつくぐらいの人もいなかったら成り立ちません。

みんながみんな、ユルい人生を送っていたら困っちゃうでしょう。

「真面目」な人も、ユルい人もいて、世の中は成り立つのです。

それ以外にも、同書には、迷惑をかけられることをお互い様と思えなど、ケース・バイ・ケースで「いちがいにいえない」ことも含まれているので、すべてを全面的にその通りというのはどうかな、と思うのですが、まあ真実というのは極論から生まれるという考え方もありますし、いずれにしても、同書の趣旨は、あまたある価値観の一つということだと思います。

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幻想を抱かないこと


いつものように、読みながら、メモを取った件をご紹介します。

いい人と思われたい


デキないと思われたくない、のは虚栄心のあらわれ、と著者は指摘します。

日本人の自己犠牲の美徳は、海外の、少なくともビジネス面では通用しない

自分の意見や感情や健康などを大切にする、したたかな「いい人」になれと提案しています。

ふと考える.jpg

ネガティブ思考は案外大事


私が、この本を最も評価する点がここです。

著者は、最近礼賛されているいわゆるポジティブシンギングに批判的です。

抜粋してみます。

・ヘコんだ気持ちの切り替えは必要ですが、リスク対策を無視した考えは単なる責任放棄
・想定外のトラブルに柔軟に対応できるスキルは、「ネガティブ思考」から生まれる
・ラフな楽天家よりも、きめ細かい心配症の人が、仕事で成功する素質を持っている
・(ポジティブ思考は)なにか強引な白々しさを感じてしまいます
・日本は仏教文化が強い国、あるがままが似合う


全くそのとおりだと思います。

ポジティブ・シンキング派の方は、この点だけでもぜひ同書をご覧になっていただければと思います。

私は、「ポジティブシンキングと前向きシンキングの違い」「東宝クレージー映画はどうして明るく前向きな気持になれるのか」などでポジティブシンキングに対する考えを書いています。

悲観や絶望と付き合う方法


ポジティブ思考でないのなら、絶望や悲観を経験したときどう向き合えばいいのか。
同書は4つの方策が書かれています。

1つ目は、絶望している、悲観的になっている自分を十分に感じる
2つ目は、人間は絶望の中にも光を見いだす習性がある
3つ目は、無理に諦めようとしない
4つ目は、自分にあった支えをもつ(友人、本の中の言葉、映画や音楽など)

要するに、とことん悲観、絶望すれば、いずれ前は見えてくる、というのです。

別の望みのために、いったん諦めるのは悪いことではない、といいます。

私は、2つ目の解説に書かれている、絶望で真っ暗闇だからこそ、微弱な一筋の光明も見逃さないのだという件はを「なるほど、うまいこというなあ」と思いました。

他人の意見はコロコロ変わる


必ずしも全面的に賛成というわけではないのですが、分析が面白いと思いました。

他人の意見はコロコロ変わる、だからあんまり期待するなよ、つまりコミュニケーションにしがみつくなよ、ということなんですが、コロコロ変わる人のタイプを3種類に分析しています。

・条件反射タイプ……咄嗟の思いつきを言う
・健忘症タイプ……自分の言ったことを忘れる
・優柔不断タイプ……他人の意見に左右される


この分析は面白いと思いました。

著者は、
「主張は一貫すべきだという価値観にしがみつかないこと」
「他人とは分かり合えない」を前提にすること

が大切だと言います。

これ、後者はそのとおりですが、「一貫すべきだという価値観にしがみつかない」というのはどうでしょうか。

そんなこと言ったら裁判や言論活動はもちろん、ひとと約束もできないじゃないですか。

私は、やはり他人との信頼関係というのは、唯一、いいかげんではいけない、しがみつくべきものだと思っています。

過失は「お互い様」でいいのですが、悪意の過ちをそれと同列にはできないでしょう。

同書はそのへんの線引と対策が曖昧な憾みがあります。

結論


同書は、全体を通して今ひとつ踏み込みが甘いところがあります。

書かれていることはそのとおりなんだけれども、それが実現しないから困っているわけで、しかもその実現は個人の心がけだけではなく、社会が変わらなければならない面もあるのですが、社会に対する提案が足りないように思います。

「社会の責任を考える」というのは、それだけ自分を責める「美徳」にしがみつかないことにつながるのですが。

いずれにしても、世の中は、とことん不条理でシビアです。疑念と憤りと不可思議に満ちています。

ですから、本のタイトルのような『「しがみつかない」人ほどうまくいく』保証などどこにもありません。

ただ、しがみつくことに疑問を感じている人、世の中の通り一遍の道徳観や流行などと折り合いがつかずに悩んでいる人が読めば、「ああ、こういう見方、考え方をしている人も世の中にはいるんだな」と心丈夫になれる一冊だと思います。

「しがみつかない」人ほどうまくいく

「しがみつかない」人ほどうまくいく

  • 作者: 西多 昌規
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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