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『母親やめてもいいですか』発達障害の娘を愛せない母親は不倫に逃避

『母親やめてもいいですか』(山口かこ著、にしかわたくイラスト、かもがわ出版)という書籍を読みました。不妊治療、流産などを経てやっと産まれた娘が広汎性発達障害だったことで失望した著者。現実と向き合えず、ネットや宗教、挙句は不倫に走り離婚。たまに会う気楽な立場になって、やっと娘と向き合えるようになったという話です。

本の帯に「感動の再生物語」と書かれています。



「やっと娘と向き合えるようになった」ことを指しているのかもしれませんが、

おいおい、かもがわ出版、待ってくれよ、と思いました。

障がい児が生まれたことが不本意で、不倫して、別れた夫に、障がい児の育児をさせる展開を告白したこの本は、「赤裸々」ではあっても、「感動」なんかではないでしょう。

このような帯で売る、かもがわ出版に対して私は、「民主的」表現活動の事業者としてどうなのよ、と思います。

著者の、現実の倫理観に埋没せずに表現し切る赤裸々さは尊重していいでしょう。

人間、キレイ事だけじゃないし、その弱さを伝えることは表現活動として大切だから。

でも、それを美化、美談にまで持ち上げる必要はあったのでしょうか。

不貞や宗教に逃げてしまったダメな母親です。弱い人間です。

淡々とそこだけ語ればいいんじゃないでしょうか。

読む人がそこに、人間の弱さと、その人の向き合う葛藤を自分に置き換えて考える機会になればいいのです。

それを美談仕立てにしてしまったら、もし自分の子どもが発達障害なら心から愛せなくても仕方ない、不倫してもやむを得ない、というネガティブな啓蒙を企図しているのかと勘ぐられても仕方ないと思います。

親子連れ

実は私も、かもがわ出版から過去に3冊上梓したことがあるのですが、それとこれとは別!

なんかがっかりしてしまいました。

そういう帯にすれば、発達障害児の育児にくたびれた親に共鳴されて、本が売れると思ったのかな。

この著者のように、浮気や宗教に走っている人には共鳴されるかもしれませんが、そうではない人たちの大部分からは、「冗談じゃない」と思われるんじゃないでしょうか。

そういうアンケートはとっていませんけどね。

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表現者としての評価と生き方の評価は別


出版社の姿勢批判はこのへんにして、肝心の中身についてはどうか。

私は、著者については、実はそれほど腹は立ちません。

著者の生き方は、苦労知らずでプライドの高い人の、自意識過剰な末に転落した身勝手なんだろうと思いました。

世の中、もっとひどい生き地獄や罰ゲームの人生を過ごしている人はいますから。

でも、その一方では、繰り返しになりますが、世間から批判されるのを承知で、現実の倫理観に埋没せず自分の恥を上梓したわけです。

その表現者としての評価はしておきたいですね。

人間というのは弱いものだから、自分だっていつそうなるかわからない危うさを誰でももっていると思うのです。

私がこの本を読んで強く感じたことは、次の2点です。

実は一番残酷なのは子供である、とっとと子離れしなさい


私が著者の娘の立場だったら、少なくとも離婚後自分を引き取って苦労を一人で背負った父親孝行になります。

父親の立場や気持ちを考えて、母親とは距離を取るでしょう。

でも、この著書の娘はそうじゃないんです。

身勝手な母親を求めているんです。父親の労苦もメンツも丸つぶれ。

父親が、育児にどれだけ苦労したかわかっていないようです。

子供は直截で純粋というけど、ちっとは父親のことを考えてやったらいいじゃないか。

子供って残酷だなあと思いました。

この娘さんが、他人の気持ちを斟酌できない障害をもっているからかもしれないので、一方的に責めることはできませんが、なんかこの話って、いつぞや大騒ぎになった喜多嶋舞の話に似ていると思いました。

遺伝子的に不義の子なのに「父親」に育ててもらった。

にもかかわらず、母親の有利になるような発言をする恩知らずな息子……。

いずれにしても、親子の離別やトラブルというと、決まって「子供が犠牲者だ」なんて言いますが、そうとは限らないということですね。

少なくともこの本のケースは違います。

子どもには子どもの価値観や人格がありますから、恩知らずな「母親がいい」発言をされても、それは父親にはどうすることもできない。

父親としては、報われないという思いがあるでしょうけどね。

言い方を変えると、子どもには期待するな、ということかもしれません。

そう。子離れできないあなた。子離れしなさい、ということを著者の意図や自覚にかかわらず、この本は私たちに教えてくれているのかもしれません。

もし、連れ合いの不倫が発覚して離婚になったとき、子どもが自分を裏切って別れた連れ合いに走っても、あなたは生きていけますか?

そんなことをつきつけられたような気がしました。

他人が断罪すべきことではない


こういう話がネット掲示板に出ると、大部分の母親断罪書き込みと、その反動の判官贔屓書き込みで賑わいます。

よくもまあ、自分のことを棚に上げて、ああだのこうだのと書けるなあ、といつも感心してるんですけどね。

今回の話なども、あらすじだけだったら、障がい児を置いてきぼりにした身勝手女として「子どもがかわいそう」というもっともらしい書き込みに溢れそうです。

でも、本をよく読むと、著者の娘はたまに母親に会い、別に父親との生活もきちんとされているようで、別段不自由はなさそうです。

むしろ、離婚しなければ、この「身勝手な女」はストレスを貯めて、ますます荒んだ家庭になり、いずれにしてもまともな育児などできなかったでしょう。

母親の生き方の良し悪しはともかくとして、そういう母親である以上、離婚して父親が引き取る結末は必然かもしれないと思いました。

少なくとも当事者しか知り得ない事情と成り行きの結果としてその状態があるのですから、他人が断罪する必要はないのです。

島国根性の我が日本人は、少し他人への道理のない干渉に熱心さがすぎるのではないかと私は思うのですが、まあ、それが善意のものであるというのなら、発達障害に対する理解を深める方向にそのエネルギーをもっていった方がいいのではないかと思いました。

母親やめてもいいですか

母親やめてもいいですか

  • 作者: 山口 かこ
  • 出版社/メーカー: かもがわ出版
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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