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『男たちの旅路』鶴田浩二の対話型ドラマを思い出す

『男たちの旅路』というドラマが、1976年2月から1982年2月にかけて、土曜日の夜にNHKで放送されました。当時のプロデューサーだった近藤晋氏、脚本家の山田太一氏、出演していた水谷豊の3人が作品と主演の鶴田浩二について、今週発売の『週刊現代』(9月20・27日号)掲載の「『男たちの旅路』鶴田浩二を語ろう」という座談会で振り返っています。

男たちの旅路

『男たちの旅路』は、特攻隊の生き残りであるガードマン・吉岡晋太郎(鶴田浩二)と、若い同僚(森田健作、水谷豊、柴俊夫ら)による、仕事で経験したいろいろな人との関わりから、人間の価値観や信念とは何かを追求したドラマです。

自らも特攻隊の生き残りだった鶴田浩二。生きたくても生きられなかった仲間たちを見送った者として、高度経済成長を経て絶対的貧困から脱した日本の中で、どこか軽薄になっていく時代の風潮や、戦後生まれの若者たちの態度が認められない。そんな葛藤をリアルに演じています。

一方では水谷豊が、戦後生まれの価値観で鶴田浩二と対立しています。が、決して水谷豊の生き方や主張も間違ってはおらず、視聴者は世代間の相克と人間の価値観の奥深さを考えさせられます。

土曜の夜に落ち着いたドラマを見たかった


私も見ていた記憶があるのですが、放送されていたのは土曜午後8時です。

通常は日本テレビの『全日本プロレス中継』を見ていたはずです。

また裏には、TBSテレビの『8時だョ!全員集合』というモンスター番組がありました。

たぶん、プロ野球中継でプロレスがないときに見ていたのかなと思います。

『男たちの旅路』は土曜午後8時放送といっても、毎週ではありませんでした。3回ぐらい放送するとしばらく休んで、また3回ぐらい放送してという間隔で、6年間で合計13回しか放送されていないので、ほぼ単発ドラマペースです。

この頃は、国家公務員の完全週休2日制実施前で、民間企業でも採用しているところはほとんどなく、土曜日の夜は、やっと1週間が終わったとホッとする時でした。

そういう時間帯には、落ち着いたドラマを見たいと思ったのかもしれません。

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ドラマの見どころは……


このドラマが印象深いのは、作品の核となる葛藤や相克について、きちんとセリフで決着をつける誠実なところです。

毎回、ストーリーが展開して、佳境に入ると、鶴田浩二とその回のメインゲストが対話をするシーンになります。

ゲストが自分(たち)の主張を行う。すると、鶴田浩二は、例の声で、「そうでしょうか」とやんわり否定して、おもむろに自分の意見を述べ始めます。

そのシーンが長い。観念的な芝居や禅問答ではなく、とにかくまじめに突き詰めていくのです。

同誌でも水谷豊が述べていますが、第1回で自殺をしかけた桃井かおり演じる女性に対して、鶴田浩二演じるガードマンは、なんと9分以上しゃべっています。(YOUTUBEにもアップされていますね。著作権者への許諾は知りませんが)

こういうドラマもあっていいな、と当時思いましたね。

私は青春学園ドラマが好きでした。あの分野の作品は葛藤はいろいろ出てくるのですが、結局解決はしてないことが多かったと思います。

たとえば、先生と生徒の対立が最高潮に達して、さあどうなるんだろうとハラハラしていたら、急に2人が走りだして、だんだん笑顔になって、ほぼ同時に倒れて、でも2人は手を握り合っていて解決とか(笑)

別に客観的な問題は何も解決していないのに、走ったり喧嘩したりするとそれで解決ということになってしまう展開。

人間は相互信頼があればなんでも乗り越えられる、というようなことを言いたいのだろうと思いますし、難しい理屈を並べるよりも、観念で解決するのはドラマとしてわかりやすいひとつの表現形式だと思います。

でも、作品としてその対立をどう克服したかったのか、観念に任せず言葉で決着をつけていくという『男たちの旅路』の作り方は誠実でいいなあと思いました。

誠実といえば、今や『相棒』というロングセラーを代表作に持ち、大物俳優の仲間入りをした水谷豊が、若い頃の思い出話をしに、週刊誌の座談会に出席したことも、読者としては嬉しく思いました。

改めて作品を鑑賞しながら同誌の座談会を読むと、なるほどなあ、と思うことがたくさんあります。

これは21世紀のこんにちでもおすすめのドラマです。

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