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『男はつらいよ 寅次郎紅の花』なぜ寅さんは女性と結ばれないか

『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年、松竹)を鑑賞しました。先日、菅原文太追悼記事で、『トラック野郎』の星桃次郎について触れました。人間キレイ事だけではないので、車寅次郎を美しいとは思いつつも、どこか満足しきれなかった人が星桃次郎に快哉を叫んでいたのではないかと書きましたが、その「美しい」方について書きます。

男はつらいよ 寅次郎紅の花

書いた記事はこちらです。

菅原文太を偲び、『仁義なき戦い』と『トラック野郎』を思い出す

鑑賞した『男はつらいよ 寅次郎紅の花』は、結果的に『男はつらいよ』の最終話になりました。

渥美清がすでに病気のため体力的に限界で、休み休み撮影していたことはマスコミで明らかにされていたので、観るに忍びなくて、それ以外は全作見ているのに、何と公開から20年たってしまいました。

車寅次郎VS星桃次郎も書いたことだし、また4日には、「とらや」のモデルだった老舗団子屋「高木屋老舗」のおかみさんが亡くなったという報道もあったので、今こそ観るしかないだろうと思いました。

リリーは最高のパートナーだったのか


ちゃんと言葉で言ってほしい 女はー
ちゃんと言葉で言ってほしい 女はー

言葉で言えたら苦労はないよ 男はー
言葉で言えたら苦労はないよ 男はー

これが同作予告編に出ていたコピーです。

阪神・淡路大震災を神戸市長田区で被災した車寅次郎は、他の被災者をサポートして、自分は無一文のまま奄美群島加計呂麻島で暮らす旧知のリリー(浅丘ルリ子)の居候になります。

一方、甥の満男(吉岡秀隆)は久しぶりに泉(後藤久美子)に会い、見合いしたことを告白されます。泉は満男の気持ちを確かめたいのに、満男は泉の結婚を止めません。

なのに、結婚式当日になって邪魔をして結婚式を中止にさせてしまいます。

そして、満男も奄美群島加計呂麻島にやってきて、リリーや寅次郎と再会。

事情を話した時の、リリーと寅次郎の言い分が、そのコピーです。

これで2人は口論となります。

その後、泉が加計呂麻島までやってきて、改めて満男に気持ちを確かめ、満男は「愛している」と正直に告白したことで2人の関係は解決します。

リリーは、施設に預けている母親に会うため上京。寅次郎も同行して2人とらやに泊まりますが、そこでまた口論があり、リリーは島に帰ることに。その時は、さくらがとりなして、寅次郎も一緒に島に帰ることにしました。

が、島に帰ってからまた2人は口論。結局寅次郎は島を離れたため、今回もハッピーエンドにはなりませんでした。

寅次郎にもっとも合うマドンナは誰かというアンケートで、ダントツがリリーだったというのを何かで見た記憶があります。

私もそう思っていたのですが、リリーの側はともかく、寅次郎の価値観にリリーは必ずしも合う女性ではないのかもしれません。

リリーと結ばれるなら、他のマドンナの中にも結ばれておかしくない展開はいくつもあったと思います。

事実上の最終話ですが、なぜ車寅次郎は女性とハッピーエンドになれないのかが象徴的に描かれていたように思いました。

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万物は生成発展消滅する


改めて見ると、う~ん、みんな年取っちゃったな、という感じですね。

寅次郎が帰ってきて、お客さんやタコ社長も交えて話が盛り上がる毎度お馴染みのシーンも、微妙な間ができて、観客が盛り上がりきれなかったのでは、という気がします。

何よりも、渥美清が声が出ていません。

がんが肺に転移していたそうですが、かすれ声です。

山田洋次監督も共演者も気づかないわけがないと思います。

その渥美清をカバーできなかったわけで、渥美清だけでなく他の出演者も年齢的に限界だったのでしょう。

観客に労られるようでは、やはり潮時だったのだと思います。

山田洋次監督の構想では、この次が田中裕子、その次を黒柳徹子のマドンナで最終回にしたかったようですね。

黒柳徹子ですと、渥美清とは『夢であいましょう』や『若い季節』以来の顔合わせですが、かりに渥美清が病気でなかったとしても、あと2回引っ張るのは厳しかったのではないかと思います。

『笑っていいとも!』もそうですが、日本人というのは往生際が悪くて、長年の人気作品は風物詩として永遠に続くと思っちゃうようですが、人間にも物事にも、永遠はないんですよね。万物は生成発展消滅するのです。

老いさらばえても続けるというのは個人的には案外好きなんですが、そういう“国民的映画”になっちゃってもいいの、ということは関係者がどこかで判断しなければならないことだったろうと思います。

映画だけの話ではありません。

引き際をいつ、どうするか。これは誰でも何らかの形で考えるべき時がある普遍的なテーマだと思います。

完全版「男はつらいよ」の世界 (集英社文庫)

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  • 作者: 吉村 英夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫


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