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立川談志、歯に衣着せぬ毒舌と細心の気配りとの両面持った落語家

立川談志、歯に衣着せぬ毒舌と細心の気配りとの両面持った落語家

立川談志さん(たてかわだんし、1936年1月2日~2011年11月21日)の命日です。真打ち前の『柳家小ゑん』時代からすでにタレントとして売れっ子で、立体落語も積極的にチャレンジしてごぼう抜きで真打ちに。しかし、小さん師匠の後継者にはならず、落語立川流を主宰して「家元」を名乗り、独自の落語家活動を貫きました。(上の画像の上団と下段左はGoogle検索画面より)



立川談志のことを、「毒舌や破天荒な生き方から『反逆児』の印象が強かった談志さんだが、素顔は違い、他人に対してここまで気を使うのかというくらいの気配りをみせる人だった。」と評したのは、2011年11月24日付の『産経新聞』。

「破天荒」と「気配り」の両面があらわれたのは、「居眠り客退場訴訟」でしょう。

1998年12月17日夜、立川談志の独演会が飯田市の公民館で行われましたが、始まった直後に会社役員が居眠りを開始。

立川談志は最初、「お父さん、寝ちゃって大丈夫かい」などと声をかけていたものの、会社役員が居眠りをやめなかったため、「やる気なくなっちゃったよ」と高座を降りてしまいました。

主催者が会社役員に退出を求めると、会社役員は「金を払ったんだから何をしてもいいだろう」などと言い帰宅。

それだけでは収まらず、「落語を聞く権利を侵害された」などと裁判(10万円の損害賠償)まで起こしました。

居眠りしたくせに、「権利を侵害」も、ハチノアタマもないと思うのですがね。

案の定、1999年4月21日の長野県飯田簡裁(内田義厚裁判官)は、「居眠りは演者の意欲をそぎ、演目の続行に重大な障害になることがある。退出を求めた主催者の行為は社会通念上、相当と認められ、違法性はない」と、会社役員の主張を退けました。

立川談志のコメントは、「訴えた人は言語道断。寝たことに怒ったのではなく、お客さんとの空間を壊されたことに腹が立った。裁判長には、客と芸人の空間を大切にしてくれたことに感謝している」(『毎日』99年4月21日付)とのことでした。

退場させられた会社役員の客は、勘違いをしていたとおもいます。

つまり、会社役員は、独演会で落語を聞く権利を買っただけであり、高座のあらゆる権限を買い占めたわけでもなければ、他の観客に不都合が生じてもよい排他的な立場にあったわけでもありません。

ですから、判決は当然だと思います。

何を買ったのか、をきちんと認識しなければなりませんね。

私たちも気をつけたほうがいいかもしれませんね。

厳密に言うと、たとえば、ブログに、レストランの料理を掲載することも同様です。

料理人が、「これは私の作品で勝手に撮影してはならない。あなたは食べる権利しかない」なーんて言われたら、やっぱり撮影はできないのかもしれません。

まあたいていは宣伝になるので無問題と思いますが、「一言断っておく」のが模範解答でしょう。

このブログでよくご紹介する邦画喜劇では、立川談志は『クレージーの怪盗ジバコ』(1967年、東宝)に出演しています。

クレージーの怪盗ジバコで立川談志
DVD『クレージーの怪盗ジバコ』より

「日本の誇り」とは何だと問われているのに、「叩いて出る埃ならいくらでもあるね」として、「政治家、全学連、バーのマダム、映画の俳優もそうだね。さしあたってまあ、このスモッグなんて言うのも、そうじゃない?」と談志節全開のシーンがあります。

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声門がんと健康食品の「友情」


立川談志も晩年は、食道がんや声門がん(喉頭がんの一種)とのたたかいでした。

生前、いったんは「声門がんを克服していた」ともいわれていました。

声門がんは、圧倒的に男性に多い喉頭がんの一種です。

転移のない段階で発覚することが多いので、一般に予後はよいとされています。

私はこの頃、徳島出身の大物ジャズ・ブルース歌手の次男から、幼馴染にあたる立川談志さんについて、あるエピソードを聞いたことがあります。

次男が会長をつとめる健康食品会社の健康食品を勧められ、立川談志はそれを「効いているのかなあ」とまじめに飲み続けていたというのです。

「毒舌の談志」といわれていますが、それにしては何とも素直な感想とおもいました。

ひねってモノを言う「毒舌の談志」は営業用だったのか、私生活のごく親しい人だから顔を立てたのか、命がかかって立川談志も毒舌を忘れたのか、真実は定かでありませんが、そのいずれだったとしても、立川談志が実はテレビで見せる「立川談志」とは違う、人間味溢れる人であったのではないか、と思わせるエピソードです。

もちろん、このエピソードは、その健康食品をおススメする意図からのご紹介ではありません。

ちなみに、声門がんは再発しましたが、立川談志は声を失わないようにするためにがんを摘出せず、結果的にそれが寿命を縮める原因になりました。

立川談志は食道がんを克服したといわれていただけに、惜しい亡くなり方という気がします。

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  • 発売日: 1965/12/10
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末尾ルコ(アルベール)

立川談志、歯に衣着せぬ毒舌と細心の気配りとの両面持った落語家・・・立川談志はもちろん存じておりますが、わたしは落語自体ほとんど正面から聴いたことはなく、談志の落語も断片的にしか知りません。ただ談志が落語界で飛び抜けた存在であるという評判は定着しておりましたから、テレビなどへ出ている時もそのような前提で観ておりました。「毒舌」というのは確かに定評がありましたが、時に「素朴な毒舌」だなと感じることもあったですね。記憶にあるものの一つが、「人類愛なんて嘘っぱちだ。外国の出来事なんか本当に気にするわけがない。人間が本気で気にしているのは、せいぜい家族や身の回りの範囲くらいまでだ」という意味の話をしていたことで、確かに基本的にはそうかもしれないけれど、別に力説するほどの内容でもないかな・・・などと感じていました。談志としては偽善的な雰囲気に対しての抗議だったのだとは思いますが。

>「居眠り客退場訴訟」

この件は知りませんでしたが、公共の場で勘違いした態度を平気でするような手合いに対しての素晴らしい対応ですね。特に「会社役員」とかそうした類いの人たちには勘違い組がかなりいるのは間違いないですよね。淀川長治さんがある地方に講演に呼ばれて行ったけれど、主催者のエライ手さんは講演の場に現れず、その後の打ち上げのような場にだけ遅れてやってきたのを見て、淀川さんが烈火のごとく怒ったというエピソードを思い出しました。

>空間を大切にしてくれたことに感謝している

素晴らしい言葉ですね。公共の空間、特に対価を支払って人々が愉しむべき空間で、「金払っているから、自分の好きにしていい」と勘違いしている手合いが多く、本当に腹が立ちます。まったくいっぷく様のおっしゃる通りで、「何を買ったのか」理解できない連中は、一度こっぴどい(笑)目に合っていただきたいくらいです。他のお客さんの心情を想像できないという時点で、人間的品格はゼロに近いと思いますね。

『悪魔の飽食』は家にあったので(笑)読みましたよ。あれをいきなり読んだら、少なからず影響は受けますね。そこはエンターテインメント作家ですから、非常に分かりやすく書かれておりました。本多勝一の書くものもそうだったですが、学者の書くものの多くは無味乾燥は文章になりますが、内容は似ていても、「読ませる文章」で書くと影響力は遥かに大きくなりますね。
森村誠一でちょっと印象に残っているのは、『人間の証明』が映画化された時、批評家うけはすこぶる悪かったんですね。で、それが気に入らなかった森村誠一、「映画評論家ほど楽な仕事は他になかなかないようで、自分も作家の仕事がなくなったら、評論家になろうかな」的な発言をしておりました。ちょっと大人げないかなあと、当時子どもだったわたしは(笑)感じたものです。日本は米国やフランスに比べると批評の力が弱く、「何もせずに批判だけしている人」のようなイメージを持っている人たちがもともと多い上に、昨今はさらに批評の地位が低くなっています。しかしまともなジャンルには批評が必ずあるべきですし、あるいは政治などに対しても、批評なしでは社会が成熟しません。学生の内から、批評の重要性について学ばせてほしいというのはあります。

N高等学校もそうですが、通信制の学校はしっかりした方針とカリキュラムを持ってさえおれば、有名作家の講座もあるとか、世の中にどんどん知られるようなことをやっていただきたいと思います。通信制の浸透は、硬直した日本の教育を変えていく大きな力になる可能性があると思います。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-11-21 02:56) 

ヤマカゼ

やはりその道を極めた方々は、人情に厚いんですね。
by ヤマカゼ (2018-11-21 06:25) 

pn

えてしてブラウン管から(今は違うか 笑)見える物ってーのは実際は違う事が多い典型ですかね。
声の為寿命を縮めたのは知らなかった、それはそれで命を燃やした証なんだろうなぁ。
by pn (2018-11-21 06:48) 

Rinko

談志さん、型破りなところが好きでした。
全うな判決で良かった。
by Rinko (2018-11-21 08:34) 

hana2018

立川談志のイメージば、一言で毒舌ですけれど。
しかしただそれだけではなかった、独自の落語家活動を貫き通した人であったという。
「居眠り客退場訴訟」、状況によって眠気がどうにもならない時は誰でもある事ながら、その会社役員。どうにも腹の虫がおさまらなかった様子。
そうした勘違いをし続けているのは男の人に多いような。
通所しているディケアでも、プライドの高さから職員に対して声を荒げるのは決まっておじさん、お爺さんです。
全てを見ているわけではないものの、あの程度怒る事じゃないと思うのは度々です。
by hana2018 (2018-11-21 09:13) 

えくりぷす

「居眠り客退場訴訟」については、元弟子の快楽亭ブラック師匠が、高座で語っていました。裁判で証拠のビデオを見たら、あまりに家元の落語がつまんなくて、これは負けたと思ったそうです。それはさておき、他のお客の立場からしたら、近くで寝ている人がいたら、迷惑なだけですので、主催者の対応も裁判の結果も当然かと思います。
by えくりぷす (2018-11-21 09:26) 

Take-Zee

こんにちは!
小生意気なオッサンでしたが、落語は
巧かったですね。

by Take-Zee (2018-11-21 15:37) 

kou

この方の本音の物言いは大好きでした。
また、昭和が一つ消えてしまいましたね・・・。
by kou (2018-11-21 17:58) 

ヨッシーパパ

一時「笑点」に出ていた時をよく覚えています。
by ヨッシーパパ (2018-11-21 19:07) 

ナベちはる

思っていることをそのまま出しつつの気配り、相当難しいですがそれがやっていた談志師匠は素晴らしい方ですね。
by ナベちはる (2018-11-22 00:22) 

犬眉母

ユニークな噺家さんでしたね。
by 犬眉母 (2018-11-22 02:05) 

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