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『本日休診』井伏鱒二、柳永二郎、鶴田浩二、角梨枝子

本日休診タイトル

『本日休診』(1952年、松竹)を観ました。8月6日は、広島市への原子爆弾投下の日ですが、原爆投下の小説『黒い雨』を著した、井伏鱒二の同名の人情小説を映画化したものです。周囲の人間に煩わされる忙しい日々は、実は周囲の人間に生かされている日々でもあることをさりげなく主張しています。

三雲八春医師(柳永二郎)の三雲医院は、戦後再出発してから丸1年の記念日として、看護師の瀧さん(岸恵子)らは温泉に行き、八春医師は「本日休診」の札を掲げ、ゆっくり休もうと思いました。

ところが、勇作(三國連太郎)が軍隊生活の悪夢を思い出す発作を起こし、八春医師は部隊長となって号令をかける“処置”をします。

続いて、松木警官(十朱久雄)が、暴漢におそわれたという悠子(角梨枝子)を連れてきました。

その治療も終わらないうちに、18年前に帝王切開で助けられた湯川三千代(田村秋子)が来て、悠子(角梨枝子)に同情して自宅で面倒を見ることにしました。

さらに、砂礫船の船頭(山路義人)の夫人(水上令子)がお産をしたり、ヤクザの加吉(鶴田浩二)が義理が立たないから指を詰めてくれと行ってきたりしました。

悠子(角梨枝子)は、三千代(田村秋子)の息子・春三(佐田啓二)の世話で会社につとめ、2人はいい関係を築いているのですが、春三(佐田啓二)の結婚相手にどうかと八春医師(柳永二郎)が勧めると、三千代(田村秋子)はケラケラ笑って本気にしません。

同情して世話はしても、“キズモノ”を息子の嫁にできるはずがなかろう、という世の母親の、厳しい本音が印象に残りました。

加吉(鶴田浩二)は飲み屋の女・お町(淡島千景)と世帯を持とうと考えましたが、お町はパトロンの蓑島の子どもを流産して八春医師のところにかつぎ込まれました。八春医師はお町を助けましたが、今度は加吉が賭博であげられてしまいました。

まあこうやって、八春医師の周囲には次々いろいろな出来事が起こっています。

八春医師も大変だなあと思いますが、実は八春医師自身、加吉と同じぐらいの子どもを戦争で亡くして一度は生きる張りあいを失った人間のため、その人たちに生かされているという気持ちを持っています。

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鶴田浩二の勢いが伺える


鶴田浩二、佐田啓二、三國連太郎、淡島千景、岸恵子、十朱久雄など、知名度のある役者が次々惜しげもなく登場する、意外な贅沢映画です。

そして、この時代にしては、めずらしくテンポの良い人情喜劇だと思いました。

ひとつのエピソードが一段落つくかつかないかというときに、オーバーラップするように次のネタが始まっているというのは、観る者を飽きさせずに引き止めておくことができます。

まあ、でもやはり1950年代の価値観でしょうね。

たとえば、八春医師が、「家族がいるのが幸せだ」というセリフで締めくくっているのですが、これは家制度の余韻が残っているこの時代らしい結論。

今や、夫婦ですら別のお墓に入る人もいる時代ですから、ちょっと古い感じがします。

本作の出演者の序列ですが、どう見ても八春医師を演じた柳永二郎が主役だと思うのですが、クレジットを見ると、最初に4人が表示され、その一番右は鶴田浩二、「トップの留め」として柳永二郎となっています。

本日休診・序列

鶴田浩二をたてたというか、鶴田浩二を前面におしたてたかった感じがします。

鶴田浩二が、岸恵子と大恋愛をしたのはこの頃です。

興行をめぐる齟齬で、神戸芸能(山口組)の若衆に襲われたのがこの翌年1月です。

松竹から独立して自分の事務所を持ち、人気絶頂だったのでしょう。

市販されているDVDの映像も質は悪くないので、ストレスなく楽しむことが出来ました。

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