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『喜劇男は愛嬌』1970年の京浜工業地帯・川崎に森崎東の世界

『喜劇男は愛嬌』1970年の京浜工業地帯・川崎に森崎東の世界

『喜劇男は愛嬌』(1970年、松竹)。この作品は、封切り時には観なかったのですが、何年かたって、二等館で上映された時に観て、凄くインパクトがあったのを覚えていたので今回久しぶりに鑑賞しました。渥美清の芸域の広さ、倍賞美津子の若さ、1970年の京浜工業地帯、そして森崎東監督の観る者をハラハラさせる演出など、マニア的には見どころ十分です。



この作品を観て、ネット上の「あらすじ」をご覧になった方はお気づきと思いますが、実はネットに拡散されているあらすじは、リリースされた作品のストーリーと違っています。

たぶん、映画のあらすじを公開しているサイトが、実際の作品を見ないで、当時の脚本が変更になる前の資料を書き起こし、それが各サイトにコピペされたのではないかと思います。

私はあくまでも自分で観たものを記事にしています。

ネタバレ御免のあらすじ


男は愛嬌
DVD『喜劇男は愛嬌』より

冒頭からいきなりインパクトのあるシーンが出てきます。

20歳の設定だった春子(当時23歳の倍賞美津子)が、少年院を出所する日になり、入院したときの服に着替え始め、白い下着姿になります。

いきなり服を脱ぐ衝撃は、宮崎美子のミノルタのCMがよくとりざたされますが、松竹に入りたての彼女は、このシーンで、看板女優としての地位をつかみとったと言っても過言ではないように思います。

舞台は、神奈川県川崎市南東部。

高度経済成長時代です。

京浜工業地帯の中核となる重化学工業関連の企業がいくつも並び、煙をはいています。

それだけでなく、当時は下請けの町工場もたくさんありました。

蒸気機関車が走る鶴見線や、貨物やチョコレート色の1両が行ったり来たりする浜川崎線がうつります。

浜川崎
『喜劇男は愛嬌』より

倍賞美津子が下車したのは浜川崎駅。

古くから地元の人や、鉄道マニアなどにはこたえられないロケーションだと思います。

そして、倍賞美津子に密かに思いを寄せる、BBS連盟(非行少年更生のボランティア青年組織)員の民夫(寺尾聡)は、首都高横羽線が通り、運河がある、川崎市川崎区池上町あたりの工場で働く地元の溶接工です。

寺尾聡の兄はオケラの五郎(渥美清)。マグロ船に乗って1年以上留守にしますが、映画ではちょうど三浦の漁港についたところです。

寺尾聰によると、倍賞美津子が万引きなど非行に走るようになったのは、渥美清が悪いことを教えたからだとか。

そこで、兄を近づけないようにと思っているのですが、倍賞美津子は真面目な話しかしない寺尾聰よりも、楽しいところに遊びに連れて行ってくれる渥美清に付いて行ってしまいます。

渥美清は大宴会を催したとき、酔った亀吉(佐藤蛾次郎)にダンプを運転させたところ、倍賞美津子の家に飛び込んでしまいす。

幸いけが人はいなかったものの、家主(田中邦衛)から出てってくれと言われ、寺尾聡からも責められると、倍賞美津子に大金持ちの結婚相手を探してやると啖呵を切ります。

その候補の中には、もともとグレていたのに、叔父の会社に入って副社長になった神部(宍戸錠)もいました。

オープニングでは、宍戸錠の名前の脇に(日活)と書かれていました。

まだ映画の世界は専属制が崩れていなかった頃だったんですね。

結局宍戸錠は本気で結婚する気がなかったので、話はなかったことになります。

結婚相談所の斡旋で知ったのは作家と称する財津一郎

倍賞美津子は秘書として通いますが、寺尾聰だけでなく、渥美清まで彼女が気になって、財津一郎のマンションの明かりが消えるところを見張っています。

実は2人とも倍賞美津子が好きだったのです。

もし明かりが消えたら2人は部屋に踏み込むつもりでしたが、直前に警察が。財津一郎は結婚詐欺師でした。

その後、もとの不良グループに戻った彼女をかばって、寺尾聡は刑事(山本麟一)に手をかけてしまうのですが、死んだと思った刑事は全治一週間だったため、結局釈放。

渥美清がまたマグロ船に乗るため川崎を旅立つところを、寺尾聡と倍賞美津子が見送るラストです。

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見どころは


倍賞美津子の若さと、渥美清演じる破天荒なキャラクターです。

『男はつらいよ』が国民的映画になってしまったこともあって、同作の車寅次郎は、作品を重ねるほど、ナイーブで、退き時をすぐに察して、「バカだねえ」と言われているわりには紳士的ですらありました。

でも初期の車寅次郎は、エネルギッシュで、無責任で、調子も良くて、もっと厚顔無恥でした。

その序盤の『男はつらいよ フーテンの寅』(1970年)の脚本を手がけた森崎東が、本作の脚本と監督です。

昨日ご紹介した怪喜劇『喜劇一発大必勝』も森崎東作品でした。

パワフルで、観ている者がハラハラする破天荒キャラクターは、まさに森崎東の世界なのだろうと思います。

これからは、森崎東の作品も積極的に観ていこうと思います。

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