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『空想天国』ダニー・ケイを私淑した谷啓ワールド

空想天国

『空想天国』(1968年、東宝)を鑑賞しました。谷啓お得意のファンタスティックコメディです。自分の部屋にある、カエルのぬいぐるみと会話することで、自分自身の判断を決めるような気の弱いうだつの上がらないサラリーマンが、空想と現実を行き来しながら、自己実現を果たしていく話です。作られたのは1968年ですが、今で言う、引きこもりの人が意外と感情移入しやすい話かもしれません。



建設会社設計部勤務の田丸圭太郎(谷啓)は、母(京塚昌子)と息子一人の母子家庭。(←この2人、リアルでは2歳しか違いません)

妄想や夢は雄々しいのですが、現実の世界では気が弱くて自己主張できず、部屋に飾っている、当時流行したケロヨンに似たぬいぐるみ「ガマラ」を話し相手にしています。

会社では、同僚の前野(宝田明)にいつも先を越されます。

地震で倒れた高校の校舎を調査に行き、妄想では、下請けの土建業者(藤木悠)の手抜きを勇ましく暴くことになっています。

ところが、現実は手抜きかどうかを判断する設計図すら持参せず、後からそれを持って駆けつけた前野がうまく話をまとめて、前野の手柄になってしまいます。

事程左様に、妄想で予習したことと現実が、ことごとく違ってドジを踏んでいるのです。

部長(藤岡琢也)からは、プラスチックの新建材による設計図を極秘で作るように命じられますが、秘書の美智子(北あけみ)から犬小屋の設計を頼まれ、間違えて犬小屋の方を部長に提出。

圭太郎は守衛に異動させられます。

夜の見回りで圭太郎は、新建材のデータが入っていた金庫を開けている産業スパイと格闘。殴られて倒れてしまいますが、守衛長(佐田豊)の娘・宏子(酒井和歌子)の呼びかけで気が付きます。

宏子は、いつも妄想に出てくるマドンナだったので圭太郎はびっくりします。

守衛長はスパイの銃に倒れ、一命を取り留めましたが病院送りとなりました。

その現場に金庫の部屋の鍵が落ちていたので、宏子は圭太郎に渡します。

刑事(ハナ肇桜井センリ)は、圭太郎が鍵を持っていたところから詰問。宏子から受け取ったと答えると、刑事たちは宏子に事情を聞こうと病院へ向かいます。

美智子は、その様子を会社の近くの公衆電話を使って何者かに伝えます。

要するに、美智子が産業スパイの一味ということです。

最後は、圭太郎が産業スパイを捕まえ、機密書類を無事取り戻して部長に昇格。

宏子とも結婚するハッピーエンドです。

酒井和歌子
『空想天国』より

行動する前から、脳内の構想ばかり立派になって現実がおろそかになっていた圭太郎が、妄想の宏子が現実に登場したあたりから、現実と向き合うようになり、自己実現できるようになったという話です。

考えすぎてうまくいってないあなた、まず、行動しようよ、現実と向きあおうよ、ということが本作のテーマなのでしょう。

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結局、どういう映画なのか


熱心に観ないと、ちょっとわかりにくい作品かもしれません。

谷啓という芸名が、アメリカの映画俳優であるダニー・ケイからつけたのは有名な話ですが、そのダニー・ケイ主演の『虹を掴む男』を意識した作り方をしています。

ダニー・ケイ
Google検索画面より

いわゆるファンタスティックコメディ(現実を前提としながらその中に空想的な話が入る構成)です。

ただ、本作は、夢のシーンと現実のシーンがはっきりと分けられていないので、観る側としては戸惑いがあります。

それが制作側の狙いでもあると思いますが、あまりむずかしいことを考えずに楽に鑑賞したいなあという時は、「面白さ」よりも「わかりにくさ」の方が気になってしまうかもしれません。

谷啓主演の東宝映画というと、『クレージーだよ奇想天外』(1966年)『クレージーだよ天下無敵』(1967年)『奇々怪々 俺は誰だ?!』(1969年)とありますが、いずれも坪島孝監督。

本作は、夏木陽介が主演したテレビ版の『青春とはなんだ』(1965年~1966年)を演出した松森健監督です。

うち、『クレージーだよ天下無敵』は植木等とのW主演であり、クレージー作戦シリーズのひとつですからのぞくとして、本作を含めて谷啓主演の3作は、いずれも「夢」や「SF」がストーリーを動かしています。

谷啓自身は、アイデアマンである一方で、非常にシャイな人だったらしいですから、本作のキャラクターと重なるのかもしれません。

そして、非日常と日常が混在するめまぐるしさで、観客を戸惑わせながら主人公が自己実現する本作のような作品が好きだっただろうと思います。

『クレージーだよ奇想天外』『奇々怪々 俺は誰だ?!』とともに、谷啓ファンタスティックコメディ3部作として本作を観ると、何となく谷啓の方向性のようなものが理解できるかもしれません。

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