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『松川事件』宇野重吉、宇津井健、下元勉、千田是也、山本學

松川事件タイトル

『松川事件』(1961年、松川事件劇映画製作委員会)を観ました。タイトル通り、下山事件、三鷹事件とともに戦後史上「国鉄三大ミステリー事件」といわれているひとつをドキュメンタリータッチで描いた作品です。監督は山本薩夫。制作費をカンパでまかない、多くの劇団が協力。主演の宇野重吉は出演料全額を松川事件対策協議会にカンパしたといわれています。




松川事件については、すでにこのブログで書いたことがあります。

松川事件(安保体制の始まり? 49年)

1949年、福島県にある国鉄東北本線松川駅ー金谷川駅間で起こった、鉄道のレール外しによる 蒸気機関車脱線転覆事件です。

国鉄労組と東芝労組が首切り反対で共闘している頃であり、事件の翌日には増田甲子七内閣官房長官が、下山事件三鷹事件と「思想底流において同じものである」と談話を発表。

要するに、日本共産党など左翼的人物の仕業である、という前提で警察・検察も動きました。

別件逮捕や自白の強要等何でもありで、20名が逮捕・起訴。

高裁でも死刑その他有罪判決が出たものの、捜査機関のアリバイ隠しがバレて差し戻しなど裁判は14年にわたりました。

そして、結局全員が無罪になり、事件は時効に。

こういう、政治的反対者を孤立・弾圧するでっちあげをフレームアップといいます。

為政者や警察・検察がその気になれば、アリバイがあっても死刑にできる、という仕組みは、政治思想の右左の問題ではなくて、たとえ誰に対してであっても絶対に許されないことです。

山本薩夫監督は、本作を事件の進行にそってドキュメンタリータッチで、高裁判決までを描きました。

その後の、捜査機関のアリバイの握りつぶしが描かれなかったのは不思議ですが、たぶん最初から細かく描きすぎ、尺が足りなくなったのだろうと思います。

本作を観ると、警察が、いかにでたらめな取り調べと調書の作成をしていたかがよくわかります。

刑事を演じている、西村晃や永井智雄や殿山泰司や稲葉義男などが、巧いんですね。高慢ちきだったりうさんくさかったりして。誰がどっちかは書きませんが(笑)

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宇津井健と山本學


本作は新藤兼人ほかの脚本、山本薩夫監督。

そして、扱う題材が実在する日本共産党員フレームアップ事件。

俳優も、宇野重吉、千田是也、下元勉、北林谷栄、永井智雄、加藤嘉など、“そういう映画”にあり得るキャストが並ぶのですが、その中で意外な役者が、被告人の弁護人役に抜擢されています。

宇野重吉と宇津井健

宇津井健です。

宇津井健
Google検索画面より

ちょうど、所属の新東宝が倒産して、大映に移る前だと思うのですが、ドキュメンタリータッチの映画に出演しているのはめずらしいことです。

宇津井健が、政治的な発言をしたのはあまり聞いたことはありません。

ただ、ずいぶん昔、日本共産党の機関紙『赤旗』のインタビューで、「汚職のない清潔な日本共産党に政権をとってもらいたい」と、同党にエールを送っていたことがありました。

ですから、イデオロギーというより、「高潔」「真面目」という、いかにも俳優・宇津井健らしい価値観から、同党の支持者だったのかもしれません。

もうひとり、山本學も出ていました。

山本學
Google検索画面より

最後のシーンで、学生服を着た山本學が、被告団に涙を流しながらエールを送っています。

山本學が、日本共産党員である山本薩夫監督の甥であることは有名な話ですが、かつてあった『ゼンボウ』なる反共雑誌は、山本學と山本圭が、日本共産党に著名人の立場からそれなりの額を寄付していることを報じていました。

しかし、山本學は、安倍晋三氏の総理誕生も応援しています。

まあ、母校の成蹊大学つながりということはあるのでしょうが、芸能人というのは立場が複雑なんだな、ということを感じます。

山本學は、山本圭、山本亘の俳優三兄弟ですが、末弟の山本亘は、安倍首相のことを「あれはヒドい」と批判しています。

「過去の歴史を歪曲することは絶対にやってはならんのです。ホント、そのうちに日本は世界中から信用を失いますよ。あと、解釈改憲で集団的自衛権を成立させ、自衛隊員が他国に赴いて引き金を引くことを認める。これは絶対に許しがたいことです」(『日刊ゲンダイ』2015年5月15日付)

世論は昨今、徐々に山本亘の意見に近づいているようですね。

いずれにしても、兄弟でも立場や考え方は様々ということです。

こんなご時世だからこそ、映画『松川事件』をお勧めします。

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