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『女の中にいる他人』小林桂樹、新珠三千代、三橋達也、若林映子

女の中にいる他人タイトル

『女の中にいる他人』(1966年、東宝)を観ました。このブログでは、66年以前にに作られた映画を何本もご紹介していますが、カラー作品も少なくありません。しかし、同作はモノクロです。ストーリーはサスペンスですが、主人公の好人物然としたふるまいから、人間の評価について考えさせられました。(画像は『女の中にいる他人』より)


田代勲(小林桂樹)が、赤坂のレストランでビールを飲んでいるのを、ガラス越しに親友の杉本隆吉(三橋達也)が見つけるところから物語は始まっています。



横浜に建築事務所をもつ三橋達也は、東京で働く妻のさゆり(若林映子)を訪ねたのです。

しかし、若林映子は、彼女の友人・弓子(草笛光子)のアパートで絞殺されていました。

若林映子は、夫以外の男性との交際がお盛んだったために、犯人探しは難航が予想されました。

うーん、若林映子は私にとっては同郷の人(東京大田区出身)であり、東宝女優陣の中でもトップクラスの憧憬の存在なのですが、

若林映子
Google検索画面より

彼女が結婚するとそうなるのか、少なくともそういう役が合いそうだし、なんてここは現実と映画とを混同しながら複雑な気持ちで観ました。

火葬場で小林桂樹を見た草笛光子は、以前、小林桂樹が若林映子と一緒にいたのを見かけたことに気づき、三橋達也に告げますが、三橋達也は「彼はそんな奴ではない」と否定します。

しかし、事件以来、小林桂樹は心身ともに様子がおかしくなります。

そして、事件のほとぼりが覚めた頃、小林桂樹は妻の雅子(新珠三千代)に、実は自分は若林映子と関係していたと告白。

新珠三千代は、小林桂樹が精彩を欠いている理由を知り、家庭を守るために「忘れる」と言います。

しかし、それでも小林桂樹のコンデションはよくならず、別の機会に、今度は自分が絞殺犯であると告白。

自首もほのめかしますが、新珠三千代はやはり、家庭を守るために「忘れて」と言います。

小林桂樹はそれだけでは気がすまず、三橋達也にも告白。突然告白された三橋達也も、自分の怒りと驚きを飲み込み、自首には反対しました。

しかし、それでも小林桂樹は聞き入れません。

そこで、新珠三千代は……。


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サスペンスから感じた人間評価のあり方


成瀬巳喜男監督の手がけた作品ですが、今回は高峰秀子主演ではありません。

【成瀬巳喜男監督高峰秀子主演関連記事】
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エドワード・アタイヤの『細い線』(文村潤訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)を翻案したサスペンスです。

事件の犯人は誰か、が焦点のストーリーではなく、犯人は途中で告白しており、その前後の対応が見どころとなります。

小林桂樹は、誠実で謙虚で勤勉な人として描かれており、三橋達也はそんな彼に尊敬と信頼の気持ちを抱いています。

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だからこそ、自分の妻と関係された上に、絞殺までされても、警察に突き出すわけではなく、むしろ、彼の家庭まで壊してしまうことを案じ、「今自首しても妻が戻ってくるわけではないから」と、自首を止めるのです。

しかし、別の見方をすると、小林桂樹が演じる田代という人間は、自分さえ気が済めばそれでいいという身勝手な人間ではないでしょうか。

もちろん、絞殺自体が犯罪ですが、それだけでなく、自分が精神的に追い詰められたからといって、勝手に妻や、絞殺した相手の夫であり親友でもある相手に告白してしまうのですから。

それは、相手のためではなく、打ち明けて気持ちを軽くしたい、という自分の一方的な都合なのです。

なぜなら、本当に自首する気なら、いちいち告白せずに、まっすぐ警察に行けば良い話です。

また、なぜ絞殺したかという経緯も、妻に「誠実」に話していますが、そこでは、若林映子演じるさゆりの性癖が原因であったことを暴露しています。

正直に話すという「謙虚で誠実」な行為の正体は、死人に鞭打ち、自分の行為を免罪しているエゴにすぎないのです。

でも、先ほど書いたように、田代のようにまじめに打ち明け自首する人間は、世間では、誠実で謙虚で勤勉な人なのです。

ですから、私は改めて、人間の評価について考えてみました。

世間一般でいわれている「いい人」。

それは一面であって、その実態は、どんなもんだかわかりません。

世間では、悪役になっている人が、実は、余計な言い訳をしない、本当は心優しい人なのかもしれません。

人間評価は、うわべだけの世間の評判ではなく、自分の眼で確かめるべきではないか。

成瀬巳喜男監督の作品の狙いはわかりませんが、私はこの映画で、そんなことを考えてしまいました。

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